続き:この本を是非紹介したく

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13535. 続き:この本を是非紹介したく

お名前: wkempff
投稿日: 2020/9/21(21:31)

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ご注意:この本は性犯罪に関するものです。性犯罪の記述無しには紹介できませんので、ご不快を感じるであろう方はお読みになりませぬよう。

Catch and Kill: Lies, Spies and a Conspiracy to Protect Predators
by Ronan Farrow め度★★★★★ YL9.0

本書はドキュメンタリー、著者はピュリッツァー賞受賞です。
2017~2018年より、ハリウッドを中心とする芸能界、政財界の大物による性犯罪やセクハラの被害が雪崩を打ったように告発され、#MeToo運動と呼ばれるようになりました。
この作品は、その契機にをつくったNew Yorker誌の記事の著者によるドキュメンタリーです。

著者のローナンは21歳でイェールのロースクールを卒業して法曹資格を取り、その後オックスフォードで博士課程を修了した俊英。国務省NBCのニュースキャスターになり、朝の番組を担当します。
彼の番組では、大物映画プロデューサのワインスタインのセクハラ疑惑を扱うことになりました。ローナンは、ワワインスタインをかつて告発した女性たちに取材を行いますが、彼女らはなかなか取材に応じませんでした。
ワインスタインを告発した女性たちは、タフロイド紙などに紙によからぬ噂を流され、職を失い、精神的に病んだり、後悔の日々を送っていました。中には、訴訟を起こしながら、州の司法長官に不起訴処分にされた女性も居ました。彼女たちは、みな、なにがしかの賠償金のかわりに守秘義務協定にサインしており、これも彼女たちの口を重くした原因でした。

性犯罪を後発した女性には、会社側の弁護士や怪しいジャーナリストが接近、事件の内容を洗いざらい聞き出します。そして、内容を曲解あるいは改ざんしてタフロイド紙などに流し、社内にも悪評を流し、女性の評判を落とし、女性を立ち直れないように傷つける。その後、なけなしの賠償金とともに守秘義務協定にサインさせる、というプロセスが一般的でした。たとえば、告発者の一人は、仕事関連のパーティに出席した過去について、パーティに性的接待要員として参加した娼婦である、と書き立てられました。
女性側は、もっと強く抵抗できなかったか、など思い悩み、キャリアの中断を嘆き、アルコールにおぼれたりしていました。
これが、タイトルのCatch and Killで、告発者の味方のふりをして近づき、詳細を聞き出し、よくない噂を流して痛めつけ、守秘義務協定にサインさせて永遠に黙らせるプロセスを言います。

ローナンな辛抱強く女性たちを説得し続け、インタビューに応じビデオ撮影に応じる女性が増えてきました。
すると、意外なことに、NBCの幹部は、ローナンに取材を延期するように迫り、身辺に注意するように「忠告」したりするようになりました。また、彼には常に尾行がついており、これはブラックキューブというイスラエルの探偵組織であることが後にわかります。

ワインスタインは政界トップ含め政財界やマスコミなどに非常に濃い人脈を持ち、当然、NBCのトップとも通じていました。また、ファローの取材をつぶすために、ワインスタインは天文学的な金額を支払ってこのイスラエルの探偵組織とも契約していました。
ついに、ファローは、NBCの報道のトップオッペンハイムから取材の中止を申し渡され、キャスターとしての契約も解除されます。

ファローは、取材した内容をNew Yorker誌に持ち込み、ここで取材を続けます。
ワインスタインの顧問弁護団からは、何度も、取材中止の警告を受けるようになります。
また、ファローの家族についても言及されるようになりました。ファローは有名な俳優ウディ・アレンの息子で、ウディ・アレン自身、ファローの姉に幼児のときに性的暴行を加え(不起訴)、義理の娘にあたる女性と性的関係を持ち結婚する、など、異常な性癖を持っていました。また、ファローの叔父は性犯罪で逮捕収監されたことがあり、これについても、タフロイド紙に暴かれ批判されることになります。性犯罪を犯した叔父が居ることは事実ですが、ファローは一度も会ったことさえない、とのこと。

New Yorkerと並行して事件を追っていたNew York Timesが、ついに、この事件に関する記事を掲載します。しかし、New Yorkerは、あせらず、チームをつくって、ファローの記事のFact Checkを厳密に行っていきます。New Yorkerがファローの手による詳細な記事を掲載したのは、5日後になりました。

その後、女性たちの告発は堰を切ったように頻発し、ワインスタインは80人の女性から告発され、逮捕されることになります。また、同じくNBCの人気キャスターであったディラン ハワードも、告発され、解雇されました。

ファローには、なぜNBCからNew Yorkerに転じて記事を書いたか、質問が殺到します。しかし、ファローの動きは複雑で、NBCに取材を禁じられ解雇されとは言わず、記事の品質がNBCの基準に達していなかった、と言い逃れをします。ファロー自身、自分のキャリアのためにNBCと全面戦争をしたくなかった、また、告発した女性たちの声を世界に効果的に伝えるためにはNBCというメディアと共同歩調を取ったほうが有利、という、したたかな計算がありました。

これが、2017年秋から起こった#MeToo運動の発端で、世界的ムーブメントの発端でした。

本書は、非常に読みにくいです。ドキュメンタリーであり、日記風にすべての出来事を詰め込んだ感じがあり、登場人物が異様に多いです。巻末にIndexがありますが、そこには、たぶん600名を超える人名がリストされています。また、追及不十分に終わったトランプ大統領関連、など、脇のエピソードも多く語られます。
しかし、全体、壮大なスパイ小説のようでもあり、Giftedの若者でありながら危険を顧みないファローを応援したくなります。

たぶん、普通の人は苦労なさるかと思いますが、歴史的にも重要な記録になるかも知れず、多くの方に手に取っていただきたいです。

しかし、私には、理解できないんですよね。政財界やハリウッドの大物は、若手女優や新人女性をホテルの部屋に呼びつけて暴行する権利を持っているかのように、多くの権力者が性的暴行を続け、立て続けに告発されます。
性的衝動はともかく、金と権力があるなら、なぜもっと犯罪的でない道を選ばないのか、不思議ではあります。


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13536. 1700万語通過、おめでとうございます

お名前: 杏樹
投稿日: 2020/9/23(01:33)

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wkempffさん、こんにちは。
1700万語通過、おめでとうございます。

〉Catch and Kill: Lies, Spies and a Conspiracy to Protect Predators
〉by Ronan Farrow め度★★★★★ YL9.0

〉本書はドキュメンタリー、著者はピュリッツァー賞受賞です。
〉2017~2018年より、ハリウッドを中心とする芸能界、政財界の大物による性犯罪やセクハラの被害が雪崩を打ったように告発され、#MeToo運動と呼ばれるようになりました。
〉この作品は、その契機にをつくったNew Yorker誌の記事の著者によるドキュメンタリーです。

#MeToo運動のもとになった経過を書いた本なんですね。読むのは確かに大変そうです。登場人物600人…。苦労はあっても読みごたえがある本なんですね。

アメリカでも性犯罪は平然と行われ、それを記事にしようとすると妨害が入るという状況がある…なんともやりきれません。よく#MeToo運動につながったと思います。日本ではこの問題の深刻さが伝わっていないかもしれません。紹介してくださってありがとうございます。

〉しかし、私には、理解できないんですよね。政財界やハリウッドの大物は、若手女優や新人女性をホテルの部屋に呼びつけて暴行する権利を持っているかのように、多くの権力者が性的暴行を続け、立て続けに告発されます。
〉性的衝動はともかく、金と権力があるなら、なぜもっと犯罪的でない道を選ばないのか、不思議ではあります。

「暴行する権利を持っているかのように」…実際そう思っていたのではないでしょうか。告発されても握りつぶせばいい、と軽く見ていたのかもしれません。賠償金と引き換えに守秘義務にサインさせれば終わり。映画プロデューサーならなおのこと、新人女優を自分の意のままに動かすことが自分の力の証だと思っていたのかもしれません。


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13537. Re: 1700万語通過、おめでとうございます

お名前: wkempff
投稿日: 2020/9/24(18:15)

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杏樹さま

コメントありがとうございます。
大変遅ればせながら、1519万語通過、おめでとうございます。
ジャンルが全く被りませんが、いつもコメントを感謝しています。

#MeTooの広がりで、ようやく世界(欧米を中心としたいわゆる先進国)では一段階進んだように思います。

しかし、事実は小説よりも奇、さらに言うなら、小説よりはるかに複雑なんですね。

NBCやファロー周辺、そしてワインスタインへの告発者の周辺は、その後、#MeTooの広がりとともに緊張感を増しているように思います。
当然、被害にあった女性たちがすべて純粋無垢であったわけでもないでしょう。けっこう魑魅魍魎の跳梁跋扈するダークサイドですね。

ワインスタインの告発を初期に行い本書でも大きく取り上げられる女優のアッゴーワンは、その後、2018年のオスカーで黒いドレスを着て#MeTooに賛同したメリル ストリープを「偽善者」と激しく非難し、のちに同様の抗議を行ったナタリー ポートマンへも、同様の激しい批判を展開しました。ストリープもポートマンも「大人の対応」で話はそれ以上広がりませんでしたが。
彼女自身は、自身のサイン会でLGBTの女性に差別的で汚い(F* word満載だった、と言われます)言葉を浴びせ続け、ついには物理的な掴み合いを演じ、サイン会を中止する、など、お騒がせ行動が目立つようです。被害者側も決して聖人君子ばかりではありません。

ローナン自身はスタージャーナリストになりましたが、告発者が了解していないオフレコまで記事にした、と告発されたりしています。
また、気の毒なのは実の父親であるウディ・アレンはローナンの活動にきわめて批判的である点で、現在は父子の全面対決の様相を呈しています。
名優ウディ・アレンは性犯罪疑惑で活躍の場を失いましたが、凝りていない、というか、もはや、復活の途は無いでしょうね。それより、ローナンは気の毒。

私は、たまたま、日本企業でこのようなダークサイドを見るポジションに10年以上居ましたが、日本企業は、このような世界よりは相当にマシ、という感じがします。
一方で、日本は女性活躍については非常に遅れており、伊藤詩織さんの事件のような例もあり、世の中が変わるには相当な時間が必要のようです。


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