背景と成果について

[掲示板: 〈過去ログ〉多読と英語学習・試験に関する掲示板 -- 最新メッセージID: 1756 // 時刻: 2024/4/28(17:19)]

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187. 背景と成果について

お名前: Ry0tasan http://tadoten.blog122.fc2.com
投稿日: 2008/10/12(07:53)

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米国の学力論争について補足しておきます。

1947年ぐらいを境にして、
米国の大学入学者を対象にした読解力テストの結果が下降を続けていることが、
国力低下につながるという議論が、
米国の一般新聞を賑わしてきました。
ここで結果と言っているのは、
SATというテストの、
reading に関する部分の平均点です。

原因はテレビだろうとか、
学校の授業のしかただろうとか、
いろいろな仮説が出されました。

その経過の中で、
80年代末か90年代始めに、
英文学者の E. D. Hirsch, Jr. 教授が出した仮説というのが、
読解の方法や感性を中心にした授業内容が原因であるという主張です。

文章が簡単でも背景知識が不足していると理解できないということは、
いくつかの集団を対象にした調査で確認できているので、
この主張に一定の真理はあるようです。
少なくとも、
単語や文法や読解の練習だけしていて背景知識を軽視すれば、
結果的に読解力は伸びないだろうと考えための根拠にはなりそうです。
確かに、
単語や構文が易しくても背景を知らない内容の文章は理解が難しいです。

ただし、
この主張が支持され、
結果として大学入学者の読解力テストの結果が本当に上昇したという報告は聞いていないです。

一方、
なぜ試験の平均点が下降を続けたかの直接的な原因については、
90年代に決着がつきました。
それは母集団の変化です。
むかしはごく一部のエリートだけが大学へ入学していたのに対し、
実学系の大学も増え、
大学へ行きたいと本人が望めば行ける大学はどこかに必ずあるという社会に変化して行ったため、
入学者の平均点も変化したのだというのが、
最も確実視された回答です。

そういうわけで、
Hirsch 教授の犯人さがしは失敗に終わったのかもしれません。
それでもあえてこの話題を出したのは、
背景知識を増やすことが読解力の向上に繋がるという点に限って言えば、
期待ができそうと感じられるからです。


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221. Re: 背景と成果について

お名前: ako
投稿日: 2008/10/15(00:53)

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Ry0tasanさん、akoです。補足していただいて、ありがとうございました!

〉ここで結果と言っているのは、
〉SATというテストの、
〉reading に関する部分の平均点です。

了解しました。
国語力は、どこの国も真剣な問題ですね。

〉原因はテレビだろうとか、
〉学校の授業のしかただろうとか、
〉いろいろな仮説が出されました。

テレビが問題とされるのは日本もそうでしたね。
遠い昔に、一億総○○化だと話題になったそうですね。

〉結果として大学入学者の読解力テストの結果が本当に上昇したという報告は聞いていないです。

「アメリカ人の国語力」
「イギリス人の国語力」
…といったように書いてみると、つくづく、そのあたりどうなっているのか、
興味が出てきました。

あっ、この先をさらにRyotasanに調べていただきたい、という意味ではありませんので、どうかご心配なく〜。
多読英語力つけて、英米のネット新聞を読めるようになって、自分で読みます。(と宣言して自分に活を入れました)

〉なぜ試験の平均点が下降を続けたかの直接的な原因については、
〉90年代に決着がつきました。
〉それは母集団の変化です。
〉むかしはごく一部のエリートだけが大学へ入学していたのに対し、
〉実学系の大学も増え、
〉大学へ行きたいと本人が望めば行ける大学はどこかに必ずあるという社会に変化して行ったため、
〉入学者の平均点も変化したのだというのが、
〉最も確実視された回答です。

あーっ!! この、母集団が原因で、という話を、
日本人のTOEFLの点数関連の話題で聞いたことがあります。

日本人のTOEFL平均点数は、他の非英語圏の外国との比較で非常に低いのはどうしてなのか?という話題で、他国では本気で北米に留学する人だけが受験するが、日本人は進学目的の受験者だけでなく、力試しも含めた多様な受験者がTOEFLを受けるから、全体の平均が下がるそうだということでした。
日本は豊かなのですねー、とのん気なことを言っててもしょうがないですね。

それより、驚いたのはアメリカのことです。

(再度引用です)
〉大学へ行きたいと本人が望めば行ける大学はどこかに必ずあるという社会に変化して行ったため、

この現象は日本ではだいぶ前から顕著だったと思いますが、
アメリカ(90年代)でもそうだったんですか!

〉そういうわけで、
〉Hirsch 教授の犯人さがしは失敗に終わったのかもしれません。
〉それでもあえてこの話題を出したのは、
〉背景知識を増やすことが読解力の向上に繋がるという点に限って言えば、
〉期待ができそうと感じられるからです。

Hirsh教授の問いかけは、国語力の低下を警告する意味で意義のあるものでしたでしょうね。

背景知識と読解力って、たまごとニワトリみたいで、なんとも私には難しいです。
たしかに多少なりとも知識のある分野の本は、読解もラクなので、知らない分野のことよりは、明らかに読めるのは確かです。が、読解力不足の段階では、いくら知っているジャンルの本でも、やはり難しくて読めないです。そこで、児童が読むような英語の本で読解力をあげて、その読解力で、大人向けの本もどんどん読み、それで結果的に知識も広がる、という場合もあって、結局、影響は相互乗り入れという感じになっています。(自分の多読の経過が、そのような感じになっている、という意味です)

もっとも、国語の場合(英語母語の人が、英語の読解力を上げる場合)の話と、外国語の場合(日本人が英語の読解力をあげる場合)の話とでは、また違うということなのかもしれませんね。

いずれにしても、とても刺激的な話で、活性化されました。
ありがとうございます。


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