多読生活4年、1200万語

[掲示板: 100万語超 報告・交流 -- 最新メッセージID: 13567 // 時刻: 2024/4/26(06:43)]

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13431. 多読生活4年、1200万語

お名前: wkempff
投稿日: 2017/12/17(20:53)

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みなさま、お久しぶりです。
インドのデリーからプネーに向かうローカル便の機中でConnellyの最新作を読了、1200万語を通過しました。2013年10月から多読をはじめましたので、4年と少し経過したことになります。柊さんに比較すると子供のようなものですが、4年続いて、読書の楽しさは続いているように思います。

1100万~1200万語の間は、下記の9冊を読みました。

One Shot (Jack Reacher Series), by Lee Child
The Whistler, by John Grisham
16th Seduction (Women’s Murder Club Series), by James Patterson
The Late Show, by Michael Connelly
Chaos (Kay Scarpetta Series), by Patricia Cornwell
Quarry’ s Climax (Quarry Series), by Max Allan Collins
Elle, by Philippe Djian
Domina, by L.S. Hilton
Two Kinds of Truth (Harry Bosch Series), by Michael Connelly

1017年12月14日 1202万語

例によって長文のご紹介ですが、ご容赦ください。

Grishamの不調とConnellyの好調

Grishmは、2012年のThe Racketeerあたりから作風を変えてきているように思います。
今回のThe Whistlerも彼のトライアルの一つでしょう。この作品も、題材は、インディアン保護区にあるカジノとマフィアのつながり、判事の汚職、と非常に興味深いのですが、途中で急速にダレて、ミステリーのほとんどが勝手にあらわれた密告者の勝手なひとり語りで解決する、という、なんとも、な、展開。少し、作者、つかれたんでしょうか。

対照的に、Connellyは絶好調。
一年前にThe Wrong Side of Goodbyeで老境のHarry Boschを大活躍させ、一年後の続編を約束していました。
私もわくわくして待っていたのですが、なんと、その中間に、The Late Showを出版しました。
The Late Showは、ロス市警の女性刑事Balladeを主人公とする新作で、Balladeは上司のセクハラを告発しますが、同僚の裏切りで逆に深夜シフト要員に左遷されています。深夜要員は、正規の事件を担当する刑事が出勤するまでのつなぎ約で、もっとも地位の低い刑事でした。Balladeは、車にテントとサーフボードを積み、シフト明けに一人でサーフィンを楽しんで浜辺のテントで仮眠を取る、上司の指示を聞かず浮浪者部落の中など危険地帯に単独侵入する、など、Boschの女性版のようなキャラですが、切れのよい文章とダイナミックな展開で、今後のシリーズ展開が待たれます。
Harry Boschシリーズ新作も、予告どおり10月末に刊行されました。(Two Kinds of Truth)
Boschはロス市警を追われ、San Fernandoという近郊の小さな町で半ばボランティアの刑事をやっています。静かな市街で起きた薬剤師父子殺人事件を追うBoschは、30年前の膀胱殺人事件で証拠を捏造し無実の犯人を死刑に追い込んだ嫌疑をかけられ、二つの難事件に立ち向かうことになります。

このConnellyの最新作、私には、非常におもしろかったです。ハードボイルドでありながら優しく、すばらしい身体能力を維持しながら丹念に地道に証拠を固めていくスタイルを崩さず、多くの女性に去られ一人娘を溺愛する姿は、なんとも人間味にあふれ、涙をさそいます。

長くなってしまったので、原稿をあらためて、変な本の紹介です。


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13432. 続き:変な本の数々

お名前: wkempff
投稿日: 2017/12/17(20:57)

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この3か月くらいは、変な本ばかりあたり、ちょっと参っていました。
特に、CornwellとGrishamの新作は、疲れるばかりで、10万語ちょっとの本に各1か月くらいかかってしまいました。
簡単にご紹介しますので、もの好きの方は、どうかおつきあいください。。

Chaos, by Patricia Cornwell
女性監察医Kay Scarpettaシリーズは、全米で人気が非常に高く、作者をスター作家に押し上げました。本作が24作目にあたります。
Connwellは監察医務院で広報やITを担当していたことがあり、話は非常にリアル、死臭ただよう殺人現場、腐乱死体、司法解剖の状況などが、これでもか、というくらい過剰にリアルに描写されます。たぶん、そういう点が人気のひとつ。しかし、同時に、主人公は、Johns Hopkins(全米でHarvardに次ぐ難関の超一流医学部)を卒業し法曹資格も取り世間的には超エリートでありながら、恋になやみ、娘をネグレクトする姉との関係に悩み、男性社会である警察や検察との軋轢に悩む等身大の女性として描かれているところも人気の秘密でしょう。
しかるに、Chaosは、とてもCornwellの作品とは思えないダルな展開で、語彙レベルばかりやたら高く、非常につかれました。
Scarpettaが夫とレストランで食事をしようとしたときに出会った女性が直後に殺害されるところからはじまりますが、駆けつけた主人公が遺体の脇に到達してから遺体を検分するまでに100ページ以上かかる、それも、遺体を前にあーだこーだとつまらない議論ばかりしている、という、なんとも、な展開でした。
読み通した自分は偉かったと思います。

Maestra, LS Hilton
Domina, LS Hilton
Hiltonは、真面目に資料を積み上げて重厚な歴史ドキュメンタリーを書く女流文筆家ですが、Fifty Shades of Greyに刺激されたのか、突如してエロティックサスペンスを書き始め、これがまた大ヒットしました。3部作ですが、そのうち2作が刊行されています。
貧しい生まれの主人公Judithは苦学の末画廊に職を得ますが、経営者の陰謀で職を終われ、クラブホステスとして客を籠絡しようとしたところで事件が起こります。
Judithは逃走途中に金持ちを籠絡してクルーザーに住み込み、不都合な人間はかたっぱしから殺し、殺させ、乱交パーティに紛れこんで他人のアイデンティティを盗み、都会のど真ん中で繰り返す殺人は決してバレず、近づく富豪は先を争って大金を貢ぎ、という、なんともとんでもな展開になります。
続編Dominaにはロシアの暗部がからんできますが、究極のご都合主義は変わりません。
上流階級の生活や美術に燗する造詣(薀蓄)はしかし非常におもしろく、私は、カラバッジョの色彩や絵の具に燗する薀蓄など、わくわくとしてしまいました。
語彙レベル高く、薀蓄満載の、非常にしょうもない小説です。こんなものを足りない英語力に苦労しながら読むのは私くらいのものかと。

Elle, by Philippe Djian
この小説はもしかしたら傑作と評価されるものかも知れず、変な本に分類するのはどうかと思いますが、奇妙な小説で、非常に疲れました。
フランスで大ヒットし、映画化され、こちらも極めて高評価でした。パリを舞台にした、ちょっとしゃれた、サイコスリラーのような、性愛もののような、不思議な小説。ただし、私が読んだのは英訳です。
父親の犯罪で辛い青春時代を送った主人公は、フィルム製作会社を経営して、そこそこ成功しています。しかし、離別した夫はつきまとい、聖人した子供のできは悪く、母親は若い男性と再婚すると言い出し、苦しい私生活です。
ある日、主人公は自宅で暴行され、犯人不明だが、いつも犯人に見張られている感覚を持ちます。同時に息子は他人の子供を宿した女性と結婚してしまい、金銭的に主人公を頼ってきます。
主人公は社会的にそこそこ成功しながらどこか性的に壊れていて、隣人も恋人も元夫も同じようにどこか異常、そして、ついに、、、、という小説。
変な人ばかり出てくる変な小説。章立てが一切なく、段落区切りだけで延々と続き、読みにくいです。

Quarry’ s Climax (Quarry Series), by Max Allan Collins
これは、いわゆるPulp Fictionの人気作です。要するに、スポーツ新聞の裏面で、風俗ガイドの脇に連載されるような小説。Quarryは殺し屋で、Climaxというポルノ出版社兼ストリップ小屋が舞台。殺し屋が殺し屋に着け狙われる経営者の保護にまわる話です。舞台がストリップ小屋ですので、そういう場面もいろいろあり、実は、結構楽しめました。


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13433. Re: 多読生活4年、1200万語

お名前: SSS 事務局 http://www.seg.co.jp/sss/
投稿日: 2017/12/18(08:17)

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"wkempff"さん

順調に読まれていてたのもしいですね。
Grishamの不調とConnellyの好調
の話、参考になりました。
 自分では新作は、全然読んでいないので、
生徒に聞かれたらこの意見を伝えさせてもらいます。

Happy Reading!

"wkempff"さんは[url:kb:13431]で書きました:
〉みなさま、お久しぶりです。
〉インドのデリーからプネーに向かうローカル便の機中でConnellyの最新作を読了、1200万語を通過しました。2013年10月から多読をはじめましたので、4年と少し経過したことになります。柊さんに比較すると子供のようなものですが、4年続いて、読書の楽しさは続いているように思います。

〉1100万~1200万語の間は、下記の9冊を読みました。

〉One Shot (Jack Reacher Series), by Lee Child
〉The Whistler, by John Grisham
〉16th Seduction (Women’s Murder Club Series), by James Patterson
〉The Late Show, by Michael Connelly
〉Chaos (Kay Scarpetta Series), by Patricia Cornwell
〉Quarry’ s Climax (Quarry Series), by Max Allan Collins
〉Elle, by Philippe Djian
〉Domina, by L.S. Hilton
〉Two Kinds of Truth (Harry Bosch Series), by Michael Connelly

〉1017年12月14日 1202万語

〉例によって長文のご紹介ですが、ご容赦ください。

〉Grishamの不調とConnellyの好調

〉Grishmは、2012年のThe Racketeerあたりから作風を変えてきているように思います。
〉今回のThe Whistlerも彼のトライアルの一つでしょう。この作品も、題材は、インディアン保護区にあるカジノとマフィアのつながり、判事の汚職、と非常に興味深いのですが、途中で急速にダレて、ミステリーのほとんどが勝手にあらわれた密告者の勝手なひとり語りで解決する、という、なんとも、な、展開。少し、作者、つかれたんでしょうか。

〉対照的に、Connellyは絶好調。
〉一年前にThe Wrong Side of Goodbyeで老境のHarry Boschを大活躍させ、一年後の続編を約束していました。
〉私もわくわくして待っていたのですが、なんと、その中間に、The Late Showを出版しました。
〉The Late Showは、ロス市警の女性刑事Balladeを主人公とする新作で、Balladeは上司のセクハラを告発しますが、同僚の裏切りで逆に深夜シフト要員に左遷されています。深夜要員は、正規の事件を担当する刑事が出勤するまでのつなぎ約で、もっとも地位の低い刑事でした。Balladeは、車にテントとサーフボードを積み、シフト明けに一人でサーフィンを楽しんで浜辺のテントで仮眠を取る、上司の指示を聞かず浮浪者部落の中など危険地帯に単独侵入する、など、Boschの女性版のようなキャラですが、切れのよい文章とダイナミックな展開で、今後のシリーズ展開が待たれます。
〉Harry Boschシリーズ新作も、予告どおり10月末に刊行されました。(Two Kinds of Truth)
〉Boschはロス市警を追われ、San Fernandoという近郊の小さな町で半ばボランティアの刑事をやっています。静かな市街で起きた薬剤師父子殺人事件を追うBoschは、30年前の膀胱殺人事件で証拠を捏造し無実の犯人を死刑に追い込んだ嫌疑をかけられ、二つの難事件に立ち向かうことになります。

〉このConnellyの最新作、私には、非常におもしろかったです。ハードボイルドでありながら優しく、すばらしい身体能力を維持しながら丹念に地道に証拠を固めていくスタイルを崩さず、多くの女性に去られ一人娘を溺愛する姿は、なんとも人間味にあふれ、涙をさそいます。

〉長くなってしまったので、原稿をあらためて、変な本の紹介です。


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13435. Re: 多読生活4年、1200万語

お名前: wkempff
投稿日: 2017/12/19(23:49)

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SSS事務局 さま
(古川先生 でよろしいでしょうか?)

返信いただき光栄です。

Grishamは、2015年のRough Lawyerで車をオフィスにする弁護士を描き、それはConnellyのLincoln Lawyerのパパロディまたはパクリのように見えました。2014年のGray Mountainで女性弁護士の活動に恋愛要素を加えましたが、恋愛シーンは、正直、作者が無理して書いているように思えました。(Gray Mountainの題材はアパラチアの露天掘り炭鉱による大規模環境汚染で、これ自体は非常に興味深いし重要な問題提起なのですが)

このあたりから、あれっと思っていた(それでも、十分に面白いのですが)のですが、今回、ちょっとがっくり来たようにも思います。

懲りずに、今、最新作最新作Rooster Barを読んでいますが、少なくとも出だしは多少持ち直した感もあります。

また、レポートさせていただきます。


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13437. Re: 多読生活4年、1200万語

お名前: wkempff
投稿日: 2018/1/6(11:53)

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Grishamの最新の長編、The Rooster Barを読了したので、最近の作品について、「本のことなんでも」広場に投稿させていだきます。

Grishamは不調、と書いたのですが、彼自身は法律家であり、よく知るLaw School周辺を題材にしているので、少し持ち直した感じもあります。
しかし、やはり、私は、初期のすっきりとした作品の方が好きです。


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13434. 多読生活4年、1200万語おめでとうございます

お名前: 杏樹
投稿日: 2017/12/19(00:57)

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wkempffさん、こんにちは。

〉みなさま、お久しぶりです。
〉インドのデリーからプネーに向かうローカル便の機中でConnellyの最新作を読了、1200万語を通過しました。2013年10月から多読をはじめましたので、4年と少し経過したことになります。柊さんに比較すると子供のようなものですが、4年続いて、読書の楽しさは続いているように思います。

1200万語通過、おめでとうございます。しかも4年で!!読むの早いですねー。

私はファンタジーや歴史関連ばかり読むので全然かぶるところがなく、紹介された本は読めるような気がしません。でも楽しく読書をしている様子がうかがえて、報告は読ませていただきました。
なお、先日おすすめされたRebecaは勢いで購入して読んでしまいました。「本のことなんでも」の掲示板で報告しました。まさかこの本を原書で読む日が来るとは思わなかったので、紹介してくれて感謝です。

それではこのままHappy Readingで。


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13436. Re: 多読生活4年、1200万語おめでとうございます

お名前: wkempff
投稿日: 2017/12/20(00:01)

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杏樹さま、返信ありがとうございます。

ご紹介したRebecca、お読みくださったとのこと、重ねて感謝です。
ご紹介した甲斐がありました。

レポートも興味深く読ませていただきました。
深く読み込まれた様子がわかりました。

主人公の階級についても納得させられました。
思い出してみると、主人公は画家だったか芸術家の娘で両親をなくしてCompanionになっていたように思います(未確認すみません)
完全な身分違いとも言えない、十分に教養ある階級の出身、しかし、Maximのような完全な貴族階級ではない養あるアッパーミドルが両親を失って困窮、という、微妙な設定であったように思います。
知的レベルが高く、しかし、人を使うことや指示することに慣れていない、という設定は、実に的確、というか、小説の骨組みを決めているように思いました。

私の読書傾向をふりかえると、2年くらい前までは、傑作や難読書を読んでやろう、という意識がありました。
近は、気の向くままに選んでいます。

難解すぎて本国でも評判が悪いブッカー賞作品The Luminariesや、仏教思想とサブカルチャーとマジックリアリズムの混ざった幻想小説A Tale for the Time Beingなど、今だったら手に取ったかどうかわかりません。

その多くは、洋書を読み始める人にも読めそうなもので、決して重厚なもの難解なものを好んでいるわけではありません。

ただ、前に書いたように、たまたまかもしれませんが、変な本を立て続けに読み、それはそれで面白かったように思います。

歴史小説の書評なども楽しみにしております。


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