SSS●Learning SSS英語多読研究会

多読による英語学習を始めようとする学習者のための
よくある質問と回答

SSS英語学習法に関して、学習者のみなさんからよく寄せられる質問にお答えします。

●英語教師のためのFAQ

Q1 多読教材については、「自分の実力より一つ下のレベルから始めるのが良い」という考えかたを聞いたことがありますが、SSS英語学習法ではどう考えますか?
A1 結論からいうと、どんな人も 基本単語200語レベルの「PenguinのEasystarts」の本を、数冊(できれば10冊程度)読むところから始めるのが良いと考えます。というのは、基本レベルの本ほど、最重要基本単語の出現率が高いからです。Easystartsの本は英語を理解する上で一番重要な200語で構成されています。一方、1000語レベルの本では、最重要200語の比率は下がってしまいます。多読、すなわち英語を単語のまとまりで読む技術を身につけるには、重要・頻出の単語ほど理解度を高くする必要があります。ですから、200語レベルの本から、順々にレベルを上げていくのが最も効率的なのです。 英語がやや得意な方も、Penguin Easystartsを10000語(10冊)読んで、基本単語に関する理解を再確認し、多読・速読の感じをつかむことをお薦めします。その上で、基本単語300語〜400語レベルのレベル1の本を数万語(約10冊)読んで下さい。英語が得意な方の場合には、Easystartsの本は、1冊5分以内で読めるでしょうから、立ち読みですますこともできます。なお、環境に恵まれている場合には、Oxford Reading Tree から始めるのが理想的です。
Q2 「つまらなくなったらやめる」方式では、実用的な英語能力がつかないのではありませんか?
A2 英語学習には、基礎段階(インプットを重視する段階)、中期段階(アウトプットを重視する段階)、応用段階(仕事の道具として使う段階)の3つの段階があると思います。普通の大学生や社会人の大半は、残念ながらまだ「基礎段階」にいるのが現実だと思います。この基礎段階では、理解可能な英語をできるだけ大量にインプットすることが大切です。つまらないものや、わからないものの場合、読書スピードは遅くなり、記憶に残りません。
従って、時間あたりのインプットの量が少なくなり、効率が著しく低下します、私達は、実用的英語力をつけるためのいろいろな学習法の評価は、単位時間あたりの英語のインプットの量でなされるのが最も客観的でであると考えています。その意味でもっとも効率の良い方法は、実は、「楽しんで読書をする」ことなのです。楽しんで読書をするためには、
1) 辞書無しで読む
2) 分からないところはとばす
3) つまらなくなったらやめる

のSSS英語学習法の3原則が重要となります。
「つまらくなったらやめる」方式は、一見時間がかかり単位時間あたりのインプット量を減らすようにも見えますが、つまらなくなるまではインプットしているのであり、つまらなくなった後は、もっと他の自分の興味を本を読むことによってインプットの効率を落とさないで済むので、「つまらなくなったらやめる」のは、実は、実用的な英語力をつける一番の早道なのです。
もちろん、つまらないものも読み切ることも英語のプロになる方には必要な訓練だと思います。しかし、英語学習の基礎段階でそのような訓練をする必要はありません。
Q3 レベルを上げていくタイミングがよくわかりません。
A3 ▼分速100語〜200語の場合、あなたが軽快に読めていると感じるならば、上位のレベルあるいは、同レベルでより総単語数の多い本に進んで下さい、心配であれば、現在のレベルの本と上位のレベルの本を交互に読んでみるのが良いでしょう。
分速100語未満の場合には、レベルを上げず、むしろそのレベルの本とその下位   のレベルの本を交互に読んでみるのが良いでしょう。しかし、分速には個人差が高いので(特に大人の場合)、100語未満でも、自分が楽しんで読めている実感が続けばレベルを上げていってかまいません。
どんどんレベルが上がっていっても、易しいレベルの本を時々読むことをSSSでは強く勧めています。多読の速度を上げるには、基本単語の理解度、すなわち、見た瞬間に理解できる力をあげることが最も重要だからです。また。易しいレベルの本と難しいレベルの本を交互に読むことによって読書速度が速くなることが多数の人から報告されています
Q4 SSS英語学習法は英語力がどのくらいの人を対象にしているのでしょうか?
A4 現在、SSS英語学習法のホームページで紹介している、Penguin の EasyStarts から始める方法は、基本単語を300程度、英語の現在形、現在進行形、過去形などの知識がある方を対象としています。つまり、公立中学の2年修了程度の英語の知識をもっていることを前提とした学習法となっています。

※電通大の酒井邦秀のクラスでは、英語についての基礎知識がほとんどゼロの人たちもこの学習法で学んでいて、うまくいっています。ます。しかし、それは熟練した教師と非常に易しい本が多数そろっているといった特別の環境があるらです。同じような環境をつくれば、英語の基礎知識が全くゼロの人たちに対しても、本とそのCDだけを使って、SSS英語学習法で教えることは可能だと思います。現在、中沢賢治さんを中心とする何人かが Storytellingを導入として、まったくゼロからの多読・多聴に取り組んでいます。

Q5 NHKの英会話番組について、SSS英語学習法ではどう考えますか?
A5 全くの初学者が英語をスタートするときには、役に立つ番組です。しかし、基本単語300語とごく初歩の文法を学んでしまえば、そこから先については、効率的な勉強法ではないと判断しています。というのは、NHKの語学番組は、日本語による説明が多すぎるからです。上級の番組には英語だけで進行する番組もあり、それらは大変有用ですが、授業の半分以上が日本語での説明となっている番組を聞くのは、単位時間あたりの英語インプット量の観点からみて効率的ではありません。その学ぶ外国語だけに接して、母語の干渉をできるだけ排して、学ぶターゲットの外国語のインプットを増やすことが、外国語学習の基本なのです。
Q6 どうして英和辞典を引いてはいけないのですか?
A6 英和辞典を引かないように勧める理由は、次の4つです。
  1. わからない単語を引いていくと、読書を快適なスピードで楽しめない
  2. わからない単語を文脈や状況の中で推測する能力を高める
  3. わからない単語があっても、それを抜かしても全体の文意を推測する能力を高めるため
  4. 英和の辞書のほとんどが、英語と日本語の1対1対応の形でかかれているため、英語を理解する上で、かえって妨げになる場合がある。

1.〜3.については、どなたもその合理性に納得されるでしょう。ここでは、4.についてのみ補足します。
例えば、"cupboard"いう単語を英和辞典(研究社リーダーズ)で引くと「食器棚(一般に)戸棚、押入(closet)」とあります。一方、英英辞典(Oxford Advanced Learners' Dictionary)で引くと、"a set of shelves with a door or doors in front, either built into the wall of a room or as a separable piece of furniture. Cupboards are used for storing food, clothes, dishes, etc: a kitchen cupboard / a linen cupboard / a broom cupboard"と説明してあります。英英辞典を読めば、食器棚だけをさすわけではなく、家具または備え付けの棚ということがわかりますが、英和辞典をひいた場合には、状況ごとにもう1回引き直す必要が出てしまいます。

もうひとつ、例をあげましょう。cay という単語を研究社リーダーズで引くと、「(西インド諸島の)州、小島、州島」とあり、LONGMAN 現代アメリカ英語辞典では、"a very small island formed from CORAL or sand."とあります(OALDにはのっていませんでした)。州といわれても、普通の人たちにはそもそも何のことかわかりません。しかし、英英辞典の定義をみれば、どんなものを指すのか一目瞭然です。単語の定義を知ることは、英語の意味に似た日本語を覚えることよりはるかに重要なことです。

※辞書を引くことを、一切禁止するわけではありません。どうしても知りたい単語が何度も出てくるような場合、引いて確かめるのはかまいません。この場合、一冊につき、3語程度を目安にして引きすぎないようにして下さい。また、読書中は、読書スピードが落ちるのでできるだけ引かないようにしましょう。

Q7 私は、単語は300語くらいしか知らないのですが、辞書無しで読んでいって語彙を増やせるものでしょうか?
A7 はい、増やせます。Graded Readers は、各社のものを組み合わせると、200語からほぼ100語〜200語単位で基本単語数が増えてゆきます。最初は分からなかった単語も、異なった場面で何度も出てくるうちに、内容からの類推でどんどん意味がわかっていきます。
Oxford のリーダーには巻末に語彙が英語で説明してあるのでこれも利用できます。従って、各社の本を組み合わせて読んでいくことにより、無理なく語彙を増やせるのです。しかし、そのためには、毎週12000語以上(ペンギンのレベル1で毎週6冊)の読書を継続的に一定期間おこなうことが必要です。
Q8 単語帳を作って、語彙を意識的に覚える必要はないのですか?
A8 必要ありません。SSS英語学習法では、文章を読む中で自然に語彙を増やしていくことが最も効率的と考えています。わからない単語を書き出して、単語帳を作るということになると、読書のリズムが阻害され、インプットの効率が落ちてしまいます。多読をすることで、自然に語彙力も含めた総合的な英語力ついてくるのがSSS英語学習法の特徴です。
なお、OxfordのBookworms の巻末の英英単語帳を読書前後に読んで記憶を強化するのは時間がかからず良い方法でしょう。他社も、ぜひ、Oxford に習って、英英単語帳を巻末にのせてほしいものです。
Q9 SSS学習法を続けていけば読解力はつくと 思うのですが英語を話せるようになりますか?また、海外のドラマや映画を楽しんで見ることができるようになりますか?
A9 リスニング能力をつけるには多読だけでなく、多聴が必要です。これも、Graded Readers のテープを利用するのが良いと思います。また、話す能力をつけるには、はシャドウイングが効果的というのがSSSの考えです。まだ成功例がすくないのですが、シャドウイングで英語を話せるようになるとSSSでは思っています。
Graded Readers の朗読テープをまずシャドウイングして見て下さい。それだけではなくて、好きな映画のセリフをシャドウイングしてください。早いし、重なってたりしてきついけれど、聞き話せるようになるには、これがいちばんだと思います。最初はシャドウイングしやすいところだけでいいでしょう。「好きな映画」でなければ続かないと思います。それをDVDで見て、最初は日本語字幕でシャドウイング、それである程度繰り返せるようになったら、今度は英語字幕を出して、音と綴りの関係を意識してみてください。
Q10 SSS学習法では、精読を否定しているのですか?
A10  結論からいえば、精読を否定しているわけではありません。但し、英語学習法として、初期には、精読中心でなく、多読中心で行うべきだと主張しています。  よく誤解される方がいますが、SSS英語学習法も最終的に、「英語を正確に速く理解する」能力を身につけることを目標としているのは、他の英語学習法と同じです。ただ、その目標を達成する方法が全く従来の方法と異なるということです。「短い短文の正確な理解」から始めてその長さを長くするのではなく「易しい長文の大意の理解」から始めて長文の理解度をあげていくという方法をとるのがSSS英語学習法の特徴です。専門文献を読むときには、ゆっくり正確に読むことが必要になるのはいうまでもありませんし、そのような場合に辞書を引くことを否定しているのではありません。但し、英語学習法として、常時、英和辞書を引くことを否定しているにすぎません。  ところで、「正確に読む」ことが必要な場合、一番大事なことは一体なんでしょうか?それは、文法でも語彙でもなく、背景知識だと思います。  例えば、" Write down the derivative of log x." という文章を、数学が分からない人が辞書を片手に 「log x の導関数を書け。」と訳しても、log x がどんな関数で、導関数とはどんな意味なのかを知らなければ、この文章を理解したとはいえません。あるいは、"John loves Mary."といった文章があったとき、これを「ジョンはメアリーを愛している」と訳したら、「正確に読む」ことになるのでしょうか?それで十分と思う人たちもいるでしょう。でも、私達はそうは思いません。ジョンはどんな人でその前にはどんな人を愛していて、メアリーがどんな人で前には誰を好きで、ジョンとメアリーはいままでどんな関係でっていう背景が分かって初めて "John loves Mary."の「正確な意味」がわかるといえるのではないでしょうか?   ですから、いつでも「正確に読む」なんてことは原理的に不可能なことです。「必要に応じて、正確さを上げて読む」ことが実用的な読み方であり、そのような読み方しか私達はできません。専門文献を読むときや、試験を受けるときには、正確さをあげて読む必要がありますが、小説とかを読む場合、正確さをあげるために読む速度が遅くなって楽しめないとすれば、楽しむための読書としては正確さを必要以上にあげない方が良いことになります。実際、小説では、背景は必要な範囲でしか提供されないので、残った部分は適当に想像して読むしかありません。どんな場合でも、適当に補って読むのですから、多少わからないことを飛ばしたって、楽しめる限り問題は全くなく、楽しんで速く読む方が英語の上達が速いというのが私達の主張です。「正確に読む」呪縛を取り払えば、ペーパーバックを読めるようになるのは思ったより難しくないし、100万語程度の読書をすれば、自然に文法の基本が身についてしまいます。英語学習の初期の段階では、「正確さ」より「読む速度」、「読む量」を第一に優先にすることが、英語の単位学習時間あたりの英語の理解度を最大にする最良の方法であるというのがSSS英語学習法研究会の主張です。 なお、このような主張は、私達が初めてというわけではありません。Input HypothesisのKraschen教授は、ほとんど同じ考えを既に発表されています。
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