世界史クラブ : 薔薇戦争

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1489. 世界史クラブ : 薔薇戦争

お名前: 柊
投稿日: 2011/1/20(14:13)

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 えー、薔薇戦争に関しては色々な立場があるのですが、とりあえず一貫した説明をするために、Jean Plaidyで行きたいと思います。他の人の解釈はあとでまとめることにして、ひとまず始めます。

 ことのおこりはエドワード3世です。プランタジネット王朝の国王で、没年が1377年。この頃はイングランド王はフランス他大陸にも領地を沢山持っていました。
 エドワード3世の長男がBlack Princeと呼ばれ、大変に戦争が強かったエドワードです。いい国王になるだろうと思われていたのですが、ぽくっと逝ってしまって、即位はしないで死んでしまいました。その息子のリチャード・オブ・ボルドー(ワインで有名なボルドーで生まれたので)がリチャード2世として即位します。これがPlaidyのPlantagenetsの10巻目Passage to Pontefractの辺りです。
 リチャードと同じ頃に、エドワード3世の4男のジョン・オブ・ゴーント(今のベルギーだったかな、ガン市で生まれたので、なまってゴーント)にもヘンリー・オブ・ボリンブルクという息子が生まれます。このジョン・オブ・ゴーントが国王になりたくてなりたくて仕方のない人で、兄弟順が違っていれば自分が国王だったと思っていたらしい。ランカスター公ですが、王位ほしさにカスティリアを追われた世継ぎの王女コンスタンツェと結婚してみたりします。ヘンリー・オブ・ボリンブルクの母は最初の妻のブランシェ・オブ・ランカスターで、後々出てくるボーフォート一族は最後の妻、というか愛人というか微妙なキャサリン・スウィンフォードの子です。

 あまりよい王ではなかったらしいリチャード2世から、ヘンリー・オブ・ボリンブルクが王位を奪うのがPassage to PontefractとThe Star of Lancasterです。
 ヘンリー4世となったボリンブルクですが、その子どもがヘンリー5世で、戦争の天才でした。ヘンリー5世の代でフランスをほぼ手に入れ、国王シャルル6世の娘であるキャサリン・オブ・ヴァロワと結婚して、シャルル6世の死後はフランス王として即位するということでフランスとの戦争が終結します。
 ところがこのヘンリー5世がまたぽくっと逝ってしまって、シャルル6世より先に死んでしまったんですね。イギリス側は大急ぎでヘンリー5世の息子(幼児)をヘンリー6世として即位させ、フランス国王にもしようとするんですが、フランスにジャンヌ・ダルクという救世主が現れて、フランスの領土を徐々に失っていきます。
 キャサリン・オブ・ヴァロワはウェールズ出身のオーウェン・テューダーという召使いと仲良くなり、秘密結婚までして、子どもを次々に産んでいきます。
 この辺りがEpitaph of Three Womenです。

 さて、ここでようやっと薔薇戦争の本題に入ります。
 ヘンリー6世は狂っているといわれていました。Mad Kingと呼ばれた、シャルル6世の血が出たともいわれていますが、ランカスター家が王位を簒奪した報いだという話も出てくるわけです。ランカスター家が正当な国王じゃない。じゃあ、誰が正当な国王だ?
 ここでやっと、ヨーク公リチャードが出てきます。ヨーク公の先祖というのはエドワード3世の5男エドムンドで、ジョン・オブ・ゴーントのすぐ下の弟です。ところがジョン・オブ・ゴーントにはライオネルという兄貴がいまして、ライオネルの娘のフィリッパにはマーチ伯ロジャーという息子がいました。ボリンブルクが王位に就いた時には、有能な手腕を発揮する王をということだったので、子どものロジャーは視野の外だったんですが、ヨーク公リチャードはこちらの子孫でもあるわけです。家系図をたどっていくと、これ、問題になりますよね。
 というわけでヨーク公リチャードが自分こそが正当な国王だと名乗りを上げます。そのままだとヘンリー6世には勝ち目がなかったんですが、幸か不幸か、ヘンリー6世にはマーガレット・オブ・アンジューというフランスから来た気の強い、根性のある王妃がいました。これがThe Red Rose of Anjouです。
 ヨーク公リチャードは斃れますが、息子のエドワードがエドワード4世として即位します。

 こうして、Plantagenetsも最後の巻The Sun in Splendourに入ります。
 エドワード4世には従兄でキングメイカーと呼ばれるウォリック伯がついていました。ウォリック伯の人形がエドワードというぐらいの関係だったんです。ウォリック伯はエドワードの王妃に外国の王族も準備して、交渉にも入っていました。
 ところが、エドワードは一目惚れしたとか言って、ただの騎士の未亡人、貴族としては最下層ぐらいのエリザベス・ウッドヴィルと結婚して、それをしばらく隠していました。ばれなきゃいいと思っていたのか、ウォリック伯の交渉が詰めに入ったところでやっと打ち明けたので、ウォリック伯はとにかく怒ります。この結婚が二重に問題になりますが、それはあとで。
 エドワードはeasygoingの人なのか、エリザベス王妃の身内を、エリザベスに頼まれるままにどんどん国の重職に取り立てます。弟のクラレンス公ジョージの婚約者にという話があった外国の王族まで、エリザベスの連れ子の結婚相手にと打診する始末。
 ウッドヴィル一族と、それからエリザベスの前の夫の子どもや何かのグレイ一族が国の要職をどんどん占めて、ウォリック伯たちネヴィル一族は自分たちの権利を奪われたと怒り、エドワードに反乱を起こします。キングメイカーは今度はヘンリー6世を国王に戻したんです。
 しかし、エドワードが最終的には勝って、ウォリック伯、ヘンリー6世の息子のエドワードなどは処刑されます。この時、リチャード3世になるグロースター公リチャードは、エドワード4世の味方として活躍します。
 エドワード4世が亡くなって初めて、エドワード4世がエリザベス・ウッドヴィルより前にエリナー・バトラーという女性と結婚し、エリナー・バトラーが生きているうちにエリザベスと結婚していたことがわかりました。エドワード4世が弟のクラレンス公ジョージを処刑したのは、この秘密を知ったからだと言われています。
 エドワード4世の子どもたち、エドワード5世になるはずだった少年や、ヨーク公リチャード、長女のエリザベスなど、みんな私生児で相続権がないわけです。
 ということで、リチャード3世が即位しますが、3年ほどでボーフォート家を母方に持つテューダー家のヘンリーが、リチャードを殺して即位し、エリナー・バトラーとエドワード4世との結婚の証拠を全て処分して、リチャードが理由もなく王位に就いた上、甥を殺した大悪人だということにしたのです。
 ヘンリー・テューダーがヘンリー7世として即位し、エドワード4世とエリザベス・ウッドヴィルの長女エリザベス・オブ・ヨークと結婚したあとも、「エドワード5世」とヨーク公リチャードはたびたび問題になります。リチャード3世が殺したことになっていましたが、実は生きていたといって名乗り出て、王位を請求する人物が何人も出たのです。
 もっとも、2人の少年を殺したのはヘンリー7世のようです。そもそも、2人の少年が死んでいたとしても、ヘンリー7世より王位継承順位が上の人間は、数え方にもよりますが、20人いたとも言われているので、王位簒奪者がヘンリー7世なのは間違いないです。

 さて、その他の本の紹介へ行きたいと思います。一番おすすめで、一番YLが高いのがSharon Kay PenmanのThe Sunne in Splendour。エドワード4世の即位前からヘンリー7世の即位までを書いていて、群像劇がすごいです。

 もう少し読みやすいのがSandra WorthのThe Rose of York三部作で、リチャード3世とウォリック伯爵令嬢アン・ネヴィルの恋物語になっています。アン・ネヴィルはヘンリー6世の息子のエドワードと結婚したあと、リチャード3世と再婚し、王妃をあまりやらないうちに病死しています。
 同じ著者でエリザベス・オブ・ヨークのThe King’s Daughterとウォリック伯の弟の恋を描いたLady of the Rosesも面白いです。

 それから、Jean PlaidyのQueens of Englandにキャサリン・オブ・ヴァロワのThe Queen’s Secret、アン・ネヴィルのThe Reluctant Queenがあります。

 Rosemary Hawley JarmanにWe Speak No Treasonという、リチャード3世の恋人の物語がありますが、ちょっと難しいのでまだ読めていません。

 Anne Easter Smithはやさしいものの長くて、A Rose for the Crownというリチャード3世の恋人の話と、Daughter of Yorkという、エドワード4世の妹でブルゴーニュ大公夫人になったマーガレットの話があります。マーガレットは兄たちの死後も生きていて、「エドワード5世」やヨーク公リチャードの、多分偽物を援助していました。

 Margaret Campbell BarnesにもThe Tudor Roseというエリザベス・オブ・ヨークの小説がありますが、残虐な叔父リチャードから救ってくれる正義の騎士ヘンリー7世を恋い慕うもので、手をつける気になれません。

 リチャード3世の名誉回復の最初になったのは多分Paul Murray Kendallの伝記と、ジョセフィン・テイの小説「時の娘」でしょう。他にMichael Hicksの伝記やAlison WeirのWars of Rosesも評価が高いです。

 あと面白そうなのはMichael Hicksの伝記Anne Nevilleや、Anne O’Brienでアン・ネヴィルが主人公のVirgin Widow。
 エリザベス・ウッドヴィルもArlene Okerlundの伝記が面白そうです。
 Philippa Gregoryもマーガレット・オブ・アンジューのRed Queenと、エリザベス・ウッドヴィルのWhite Queenを最近出しました。

 最後に言うのもなんですが、森護の「英国王室史話」によると、ランカスター家の赤薔薇、ヨーク家の白薔薇というのは、旗印にしたものではなく、使用人がつけるバッジで、双方がそれを描いた旗を掲げて戦ったというのは、後生の創作だそうです。キングメイカーというあだ名も、当時はなく、後世につけられたらしい。
 それから、リチャード3世のせむしとか、身体障害というのも、障害者が悪魔と契約したとされていた時代に、リチャード3世を悪人に仕立てようとしてでっち上げられたのだそうで、片方の肩が下がった肖像画も、科学的に調べると、元は両肩の高さが同じだったのを、あとで描き替えたと判明したそうです。
 ただ、それを言い出すと昨今はやっているリチャード3世とアン・ネヴィルの恋愛結婚も多分、政略結婚だったと思われるそうで、歴史の事実を調べるというのも、楽しい時と、ちょっとがっかりする時がありますねえ。

 以上、出てきた本はほとんどが書評登録してあるので、検索も参考にしてください。リンク張るのは、数が多すぎて力尽きました。

 まとめるとPlaidyは歴史全体がわかるけど、著者の最高傑作とはいえない。The Sun in Splendourにしろ、The Reluctant Queenにしろ、読んでいるとどんどん悲しくなってきて、辛かったです。Sandra Worthはロマンティックで好き。Anne Easter Smithは途中で投げたので何ともいえない。Philippa Gregoryは合わないらしく、一度読むとリハビリに好きな作家の本を半年ぐらい読み続けないといけなくなります。


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