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東尾 奈々さん
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
研究開発本部宇宙環境グループ
慶應義塾大学理工学部卒/慶應義塾大学大学院理工学研究科物理学専修卒
豊島岡女子学園高等学校
SEGでは、数学・英語・化学・物理を受講。
趣味は海外旅行。色々な文化をもった地域に行くことで常に自分自身が成長して日本に帰って来られることが楽しいため。今まで訪れた国は14カ国以上になる。特に、モンゴルの雪原で見上げた星空は凄くキレイで感動した。

「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」で開発員として活躍されている東尾奈々さんに、「筑波宇宙センター」でお話を伺いました。インタビュアーはSEG広報担当で、東尾さんのSEG生時代からの友人である田中が務めました。

JAXAでの仕事は?

所属している研究開発本部宇宙環境グループはどんなことをしているグループなんですか?

衛星のプロジェクトに対する支援という役割を担っているグループで、コンセプトとしては、衛星障害に対する情報提供というところが最も大きいです。衛星障害というのは色々原因があるんですが、その中でも放射線の影響が一番大きいんですね。宇宙環境というのはまったくの真空じゃなくて、プラズマ、電子、陽子なんかが漂っていたり、太陽から飛んできたりと結構変動していて、その変動にあわせて故障が起きたりすることがあります。常にその宇宙環境をモニタリングしていて、衛星に障害が起きたとき、そのとき宇宙環境はどうでしたか、という確認がきます。それで、例えば「宇宙環境ですごく陽子が降ってきていました、それで壊れた可能性が高いです」とか「そのときは宇宙環境には何もなかったです、だから別の原因があるんじゃないですか」とか、そういうことを考える材料を提供するグループです。私達がこうだって強く主張するんじゃなくて、衛星のプロジェクトがあって、それに対して「ちょっと衛星の調子が悪いんだけどどうしてかな?」というときに、ひとつの材料として宇宙環境は聞かれるんです。

なるほど、宇宙環境というのはそういう意味だったんですね。

そうなんです。宇宙の環境をモニタリングして、放射線粒子を計測しているグループです。主な業務としては、計測するためにはセンサーが必要なので、そのセンサーを作るということをしています。軌道によって宇宙環境も全然違うので、データを元にここではこういうのが必要だ、というのをある程度予測して開発します。

「軌道」というのは、衛星の軌道ですよね?

そうです。センサーを作って、衛星に載せて、データをとって、そのデータを元に現状を知ることもあるし、それを蓄積していって最終的に将来の予測をしていくということもします。何日か前にこういうことが起こりそうですということが言えれば、衛星自体も対処ができるということもあって。そういったことをやっているグループです。

東尾さんの主な仕事はどんなことですか?

大体みんな一連のサイクルをやるんですよ。何かプロジェクトが走っていて、それに対してうちのセンサーを載せてくださいというのがまずスタートで、センサーが載ることが決まったら、その測りたい領域での適切なセンサーの設計をして、作って、載せて、データをとって、解析する、というのが一連の流れ。
どちらかというと、今私達のグループでやっているのはエンジニアに向けての情報なんですが、今私はちょっとそこから外れていて、宇宙科学研究所(ISAS相模原)にある科学衛星のミッションに関わっています。サイエンスで宇宙空間の状態を調べましょうというミッションの衛星[ERG(小型科学衛星2号機)]に、うちのセンサーを載せてくださいという話になっていて、今そこに載せるためのセンサーを開発している最中です。
地球の周りには電子と陽子が異常に密に集まっている「バン・アレン帯」という領域があるんです。それがドーナツ状に地球をカバーしていて、そこを衛星が通ると、電子が機器をアタックしたりして壊れやすいので、すごく衛星運用に重要な領域なんです。実は太陽というのは、常に同じ状態じゃなくて、11年周期で元気になったり弱くなったりとかするんですが、太陽が元気になって表面が爆発したときに、バン・アレン帯というのは膨らんだり、無くなったりと、結構変動するんですね。だけど、その原因はちゃんとサイエンス的には解明されていなくって。

因果関係があるのは分かっているけど、なぜかは分かっていないということでしょうか?

そう、それを詳しくサイエンス的に調べましょうという衛星がERGです。その衛星に載せる一部のセンサーを私達のグループが開発していて、その担当者をしています。それが今一番ヘビーな仕事です。
もう1つ小さくやっているのは、大気モデルについてです。地球の周りには大気があって、紙飛行機とかを飛ばしたら、大気の抵抗を受けるから落ちてきますよね? ある程度衛星が下に降りてきたときもそれと同じ現象が起こって、常に推進というか、ふかしていないと軌道からどんどん下がっていくんです。地球までの大気密度は結構変動していて、分かっていないところも結構あるので、そこをどういう風にモデリングしていくかということもやっています。モデルはあるんですが、統計モデルといって、物を落としてみてこの時期はこうでした、この時期はこうでした、という相関はあっても、それがどうしてかは分かっていないんです。さっきの「太陽がバーンとなりました、バン・アレン帯は小さくなりましたって相関は分かっているんだけど、それがなんでかは分かっていない」というのと同じです。それを物理モデルからうまく再現できないかということを、大学の先生と一緒にやっています。

意外と分かってないことって多いんですね。地球の周りのこととか、ほとんど分かっているのかと思っていました。

統計的には分かっているけれども、短期的変動とかに関しては分かっていないことも結構多いんですよ。

話がセンサーの開発に戻りますが、具体的にどうやるんですか?

物を作るというのは、基本的にはメーカーの方にやってもらっています。でも、大体この領域ではどういう物が必要だなというのがあるんです。例えばどれくらいの時間スケールで測ったら良いデータが取れるかとか、そういうところの検証や、中の構造をどうしたらいいかっていう大きな枠組みも私達がやります。回路の部分などもある程度考えますが、メーカーの方もプロなので、一緒に考えながら「このときはこうしたらいいですね、ああしたらいいですね」と協議しながら作っていきます。でもこういう物が欲しいという大きな、抽象的なところはこちらで決めていって、私達が責任を負います。

メーカーの人とうまく協力していかないとちゃんと物はできないということですね。

メーカーの人もそうだし、プロジェクトの人もそうだし、今回のミッションは大学の先生も関わっているので、大学の先生からサイエンス的な背景をきちんと聞いておかないと、意味の分からないセンサーができてしまって、打ち上げてもできませんでしたってなっちゃう(笑)。だからすごくコミュニケーション能力は必要で、自分から何の情報が必要か精査していかないといけないし、そういう意味では大変かなと思います。あとみんなそれぞれ結構仕事を持っているので、若いうちから自分で判断して進めていかないと、気づいたら「あれ?」ってことになりかねないので、そういう意味では大変かもしれません。でもメーカーの方もプロフェッショナルな方が多いので、経験的に教えてもらえることも多く、すごく勉強になります。だからJAXAが作っているというよりは、宇宙関係のオールジャパンでやってるという風に考えた方がいいんじゃないかと思います。

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