リスニングの2つの大変化(超長文)

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1001. リスニングの2つの大変化(超長文)

お名前: KYO
投稿日: 2004/1/17(09:54)

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リスニングにその後の大変化2つについて書かせてください。ちんげん斎さんのようによく考えていらっしゃる方は珍しいんで、自分の言うことをわかってくれる人がいるらしいと思うとついつい書いてしまいました。またまた自動改行で読み辛いし、長いし、ホントごめんなさい。

中学生の時の英語の集中inputのおかげで、ローマ字読み的カタカナ英語にはならずにすみ、音の消失や連結・同化といった現象はわりと楽にクリアできていました。例えば、first of allや out of it が一塊になって聞こえるとか、could be のdの音やwith him のhim のhが聞こえなくなるとか、完全ではないけれど、このために聞き取れないということはなかったのです。特にそういう練習をしなくても、主婦になってなって多聴を始める時期以前に、何となく補って音を聞けるようになっていました。自分の話す英語も個音の発音は英語らしくないんですが、リズム・イントネーションはそれらしくはなっていたと思います。主婦になって英語をやり直しをスタートさせた時期はたぶんTOEIC600点台ぐらいだったろうと思います。リスニングの方がたぶん勝っていてL350〜400、Rが300ぐらいだろうと想像します。

ですから、今思い返すと恥ずかしいことですが、主婦になって英語をやり直すまで、自分はリスニングが得意だと思いこんでいました。ネイティブスピーカーと面と向かって話せばだいたい相手の話すことはわかるし、初級の英会話のクラスでは聞き取りに四苦八苦している人を涼しい顔で見ていられたからです。当時のラジオの英会話番組とかもOKでした。(この時期って1980年代ぐらいですから、今ほど英語が巷にあふれてませんでした。だからそういう誤解が生じたんですね)

そんな生半可な「自信」は、1本のビデオを見てお釈迦になりました。アメリカの有名なシットコム"Cheers"。これがみごとなまでにわからなかったんです。聞き取れたのは、"Yes" "No" "Hi"などの簡単な単語と名前ぐらい、ビデオを見せてくれたアメリカ人が解説して入れてくれなければ途中で放り出していたと思います。(このビデオは偶然多聴の時期を経てから見る機会があって、その時は結構わかったんでうれしかったです)

このときにやっと「生の英語」がどんなものかを思い知ったんですね。自分がこれまで耳にしていたのは、英語教材として日本人向けに加工されたものか、あるいはノンネイティブだ相手だと思ってゆっくりはっきり易しい言葉を選んで話してくれるネイティブスピーカの話す英語だっんです。ネイティブがネイティブ向けに話してる英語は全然違うと思いました。そのレベルでリスニングが得意って思っていたんだと自分がもう情けなくて、その直後にBS放送を入れてCNNやABCといった海外のニュースを中心に毎日3時間は聞くようになったんです。ニュースはわりと集中して聞いてました。あと、ながら聞きでインタビューとか好きな海外ドラマを見た後で音だけ録音して始終聞いていました。洋画も週に2本ぐらいは見てます。

この2年ほどの時期を経て、日本のバイリンガルニュースはまず大丈夫、海外のCNNなどもおおむねOKになりました。難物だったのは映画とかドラマで、ドラマは直で見るとわからないところが多いので、最初は日本語で見てから英語で見るという方法でやってました。(シリアスドラマは難しく(ERとか)シットコム(Friendsとか)は易しめといった差もあるんですが)もちろん全部細かなところまで聞き取れているわけではなく、でも意味内容はわかるんです。この時期にTOEICのリスニングセクションでは1回フルスコアを取ってますが、だからってどうだっていうんだ、まだまだ聞けないじゃないか!と思っていました。音そのものが勝負になるのがダメなんです。ニュース英語は情報量が多いので、文脈とか背景知識とかで結構補いがつきます。ポイントを絞って聞くというテストなら○がもらえます。でも映画でポンと言われたセリフなんかが聞けない。日本語ならNHKニュースのアナウンサーがしゃべってるのはわかる、でも高校生の女の子がキャッキャしゃべってたりするのは聞けないというレベルです。非ネイティブで聞けるのはここまでかなあ、と思っていました。ノンネイティブとして英語のコミュニケーションにはおおむね支障はないしといった感じでした。自分が話す英語は、音的には以前とそう変らなかったと思います。話す内容が前より複雑でちゃんとしたことが言えるようになってました。語彙も増えたし(生の英語聞きたさに単語集で補いました)英語回路のスピードもついた、あと長時間英語を聞いていても大丈夫になっていました。

これが2回あったと書いた1つ目の変化です。ちんげん斎さんが、以前、楷書、行書、草書で例えられてましたが、楷書レベルの英語が聞ける段階だったのが、行書はOK、でも草書はまだ聞けないのも多いというところまで来たんだろうと思います。このレベルまでは少なくとも多量のinputとoutputという方法で大丈夫です、いけます。

そして2つ目の変化は、自分の発音をどうにかしたいという思いがきっかけになりました。自分の話す英語の発音にはとても満足しているとは言えませんでした。やっぱり日本人英語の域をでない自分の発音に半ば諦めの気持ちでいたんです。なぜ自分の英語の発音がよくならないか? 答ははっきりしていました。私は聴覚が鋭くないからです。自分の話す英語をもっと英語らしくするには耳をよくするしかないだろうと以前から思っていましたが、でも耳をよくする?聴覚のよしあしなんて生まれつきのものだと思ってました。

それで何をやったかって言いますと、以前ちんげん斎さんがちょっと書いてらした高周波数帯の聞き取りをよくするというトマティス・メソッドなんです。聴覚トレーニングで耳の聞き取りをよくし、さらに発音も改善するというものなんですね。(私はトマティスの宣伝をしてるわけではないんで、どういうものか詳細は避けますが、興味があったらトマティスジャパンのサイトをご覧ください)でも原理だけチョロッと書きますね。自分の体験を文章化したときに原理を自分なりの言葉でまとめたものです。固く書いてあってゴメンナサイ。

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人間は誕生直後にはすべての言語音を区別する能力をもって生まれてくるのだが、短期間のうちに母語の音韻体系に含まれる音だけを区別するようになる。このような体系がいったん作り上げられてしまうと、外国語の音は聞こえていても聞き分けることができなくなる。

このようになるのは人間の耳のしくみによる。人間の耳は中耳の働きよって聞きとろうとする音に対して聴覚のスペクトルをズームさせるようになっている。中耳にあるふたつの筋肉「鼓膜張筋」と「あぶみ骨筋」は、耳に入ってくる音を増幅したり弱めたりする働きをもっている。ある特定の言語を話すようになると、これらの筋肉はある一定の音に対してしか反応しなくなり、その言語特有の音だけを選ぶようになるのだ。

トマティスメソッドの創始者であるトマティス博士はいくつかの言語の音声を分析することによって、言語によって優先的に使用される周波数音域があることに気づき、この周波数域をその言語の「パスバンド」としてグラフに表した。日本語のパスバンドは125〜1500ヘルツであるのに対し、イギリス英語では2000〜12000ヘルツ、米語では800〜3500ヘルツ、ドイツ語では100〜3000ヘルツの周波数帯が優先的に使われている。ある言語を話すようになると、その言語に優先的に使われている周波数帯の音に対しては自動的に聞き取れるようになるが、それ以外の周波数域の音は聞こえていても聞き分けることができなくなってしまう。

たとえば日本語話者が英語を習得しようした場合、英語の音声は聞こえても言語音として聞き分けることができないのである。低いパスバンドを利用している日本語話者の耳に聞こえる英語は、母音と子音の基になる音の部分(基音)だけで、意味の主要部分を担う子音、特に破裂音や摩擦音の高周波部分が欠落してしまう。そのために日本語話者は英語の音声の聞こえた部分だけを日本語の音韻体系を用いて処理するので、その習得には大変な困難が伴う。たとえて言えば、スキーを習う際に、スティックやスキー板のようなギアの一部を身につけないままで、うまく滑れるようになろうとするようなものだろう。

トマティスメソッドでは、難聴の治療をおこなうのと同じように、電子耳を使った聴覚トレーニングによって、このような聞き取れない周波数域を聞き取り可能にし、聴覚だけでなく発声のしかたも変え、新たな神経回路の体制を整えさせる。この方法によって日本語話者は、英語を聞き取る聴覚とその英語を聞こえたままに発声する回路を獲得することができる。このような聞き取り発声の回路を持つということは、母語を習得するための聴覚の条件付けを目標言語について再び獲得したのと同じことになり、その後の目標言語の習得は非常に容易になるとされている。
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で実際やってどういう変化があったかといいますと、私の場合は(個人差がすごくあるらしいんで、後でトマティスをやった他の人たちに私の体験を話したら「効き過ぎ、そんな人って珍しいんじゃないって言われました)細部まで明確に英語が聞こえるようになりました。近視で眼鏡をかけずにいてぼんやり見えていたのが、眼鏡をかけたらはっきり見えるようになってビックリという感覚に近いです。自分の場合、聞こえなかったのがよく聞こえるようになったというのは、いままで文脈や文法的な知識で聞こえない部分を予測や推測で補っていたのが、細部まで意識しなくてもよく聞こえてしまうという感じなのですね。たとえば複数や三単現のsの音、過去の語尾のedの音、今まで聞えないのを文法的に考えて聞えなくても聞いているみたいに自分に思い込ませていたのが、そんな補いをしなくてもそのまま聞えるんです。さらに音のつかみが大きくなったというか、一息で話される単語のひとまとまりがスポンとまるごと入ってくる感じになりました。

事後トレーニングとして苦手だった映画やドラマの英語に耳を慣らしたいと思い、毎週放送されているアメリカのシットコムを毎朝30分見ることにしました。録画した同じエピソードを1週間の間繰り返して見るのですが、2、3回聞くと全体が本当によくわかるようになりました。なかなかわからないところはかなり正確に音が拾えるので綴りの見当をつけて辞書を引くと知らない単語や言い回しだったのがわかります。最後までどうしてもわからないところが何ヶ所かは残るんですが、これほど音声的にきれいにわかることは今まではありませんでした。この方法で毎日聞いていると、6日目、7日目ごろには耳で聞いたせりふをそのまま繰り返してリピーティング(シャドーイングのこと)ができるようになってきました。ひとりで30分しゃべり続けるのは大変なので、休みを入れながらですが、文全体のリズムやイントネーションもより英語らしく自然になってよい練習方法で、以前はたぶんやろうとしてもできなかったことです。(つまり、もっと易しいゆっくりはっきりの英語の素材ならできただろうけど、生素材は無理ってことです)

肝心の英語の発音については、耳が変わり、自分でやった事後トレーニングでの英語の朗読練習で、口を突き出すようにして発音する習慣が身につき英語の発音もよくなったと思います。でもさらに何というか「音色」の部分でもっと英語らしさが出せるようになりたいとその後発声トレーニングも受けて、その後1年ぐらい練習して発声の仕方、口や舌の形をじょじょに変化させました。破裂音や摩擦音が今はちゃんと出ます。でも全体として完璧満足とは言いがたい。大部よくなったかなってぐらいです。要するにまだまだ練習なのかと思うと、いくらトレーニング好きといってもちょっとめげます。そこまで英語の発音をよくする努力って余計なことではないかと思ったり。

ということでこれが2つ目の変化です。この変化についてどう考えるかはまたあらためて書きます。もう長すぎですよね、この発言。自分の体験を記録したものからつぎはぎしてるんで読みにくいと思いますが許してください。重ねて言いますが、私はトマティスの宣伝をしてるんじゃないんで、その点はご理解ください。これがSSSのシャドーイングとどう関わるかっていうと、私の場合たくさん聞いて音読もしてきたのに、多量のinputとoutputだけでは聞けない音があったってことです。

量だけでは解決しない問題があるのか? これがすごい疑問です。私の場合は生来の耳がよくないですから、私の場合は量ではダメだった、耳がいい人なら量でも変るのかなと思ったり。SSSのシャドーイングを続ければ、耳のよい人なら、個音の発音までしっかりするのでしょうか? shとかchとか十分な息が出せるようになるのか? わからないです。 


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