語彙増強: 上級編

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2140. 語彙増強: 上級編

お名前: Ryotasan
投稿日: 2007/2/23(16:41)

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英語の文章を読んでいて、知らない単語がむやみに出会うのは、英語の中に外来語と言うか借用語が多いからです。

もともと英単語だったゲルマン系の単語は全体の1/4ぐらいで、あとはフランス語、ラテン語、ギリシャ語などから入ってきた単語です。

フランス語が多いのは、1066年から300年間ほどノルマン王朝、つまりフランスの貴族に支配されていた時期にフランス語がイングランドの公用語だったことと、その後もドーヴァー海峡を挟んですぐ隣の国だったこと、フランス語が国際語として影響力をふるった時代もあったことなどによるようです。語尾が -tion で終わる単語などはほとんどがフランス語起源の様です。

ラテン語はもともとローマ帝国の公式言語ですが、帝国が滅びてからも教会や学問の共通言語でした。ドイツ語にも、ラテン語起源の単語は沢山あります。シェイクスピアが学校で学んだのもラテン語だったようです。ケンブリッジでアイザック・ニュートンが書いた引力の論文もラテン語らしいです。前述のフランス語もラテン語の末裔と言って良いでしょう。パリ大学の教授や学生がラテン語を話していた地区はカルチェ・ラタンと呼ばれました。ハリー・ポッターにも沢山のラテン語が使われています。

ギリシャ語は、ラテン語が国際語になる少し前、地中海周辺の国際標準語でした。ギリシャの文芸や学問だけでなく、中東起源の新約聖書もギリシャ語です。ローマ帝国の学者もギリシャ語を勉強してそれをラテン語に翻訳しました。ルネサンスから近代にかけても、ギリシャ語はラテン語より一つ上の言語として学者のあいだで重視されました。近代以降も、欧米の有名大学ではギリシャ語の授業が行なわれ、大学では重要な記号としてギリシャ文字が使われました。英語の語彙の中でも、アカデミックな色彩の強い語彙にはギリシャ語起源が多いです。「アカデミック」という単語もギリシャ語起源です。現在では、医学用語や恐竜の名前などに、ギリシャ語が多いです。オリンピックもギリシャ語です。

こういった歴史があるため、英語で books と言えばすむところをラテン語風に library と言ったりする人が沢山います。もっと気取りたい人は、ギリシャ語風の biblio- で始まる合成語を使ったりします。新しい技術用語にも、ギリシャ語やラテン語を元にしている単語は沢山あります。

ですから、フランス語、ラテン語、ギリシャ語の単語を知っていれば、上級者むけの語彙はそんなに難しくないのです。辞書の読み比べをするとき、語源の項目に注目すると、さまざまな単語の相互関係が分かってきます。語源欄に "L" と書いてあればラテン語、"Gk" ならギリシャ語です。ギリシャ語やラテン語をもとにして、英国の学者や作家が新たに作り出した合成語もあります。ただし、こういう言語の文法は複雑なので、英語の語彙を増やしたい人のばあい、単語のレベルで大雑把に分かれば良いと思います。

それから、何千年ものあいだにいくつもの国で使われてきた言葉は、綴りがいい加減に扱われたり、発音も変わります。ですから、語源を学ぶ場合、化学式や数式のように割り切れないことも多いです。みなさんもいい加減な気持ちで語源に親しんで下さい。

最後に、ギリシャ・ローマについても、言葉だけを勉強するより、神話や、トロイ戦争を扱った叙事詩など、映画や多読を通して物語も知っていた方が抵抗無く吸収していけると思います。


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