RかLか—多読 VS 音読+多聴(長め)

[掲示板: 〈過去ログ〉SSS タドキストの広場 -- 最新メッセージID: 9999 // 時刻: 2024/5/20(23:05)]

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9438. RかLか—多読 VS 音読+多聴(長め)

お名前: KYO
投稿日: 2004/1/12(16:06)

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みなさん、LRクラブが設立されるということで、それにちなんで、私の「Rか、はたまたLか」の悩みをどうぞ聞いてください。

SSSの多読法を知って1年弱、ずっと私の頭の中には、この「RかLか」「多読 VS 音読+多聴」が対立するものとしてあったのです。
ようやくこの対立に何とか自分で決着がつけられそうな気がするのでここに書かせてください。

自分の英語習得は、音読と多聴が主だったので、SSSのことを始めて聞いたときには、
多読だけで英語力を伸ばす(シャドーイングも後で入りますが)というのがどうも信じられず、
音から入らない英語学習で効果があるのか半信半疑でした。
でもこの掲示板読んだり多読の授業を見学したりして多くの人の成功例を知り、
どうもこれはうまくいくらしいという感触を徐々に得てきたのですが、
それでもまず音読で英語を英語のまま理解する回路を頭の中に作った後で、
多読をしたほうが効果的ではないかとずっと思ってきました。

私自身は中3のとき、ラジオの英会話番組のテキストを何度も音読するという方法で英語回路を作りました。
音読を始めて3ヶ月ほど経って、試験で始めて見る英文が英語のままですっーと意味がとれていって、
「ああ、英語も日本語と同じように読めるんだ!」とものすごく感動したことを覚えています。

その後、30歳を過ぎて英語をやり直したときには、リスニングを中心にやっています。
私にとっては聞くことが一番楽で、楽しく長時間続けられるinput法だったのです。
読むのは、文字→(頭の中で無意識に)音に変換→意味の3段階ですが、
聞くのは音→意味の2段階で、明らかにひとつステップが抜ける感じがして楽なのです。
英語の音への慣れはすでにある程度あったので、
足りなかった語彙を単語集で補いながら(例文を何度もオーバーラップして単語をなじませる方法)、多量の英語をinputしました。
読むほうも多少はやりましたがメインはあくまでリスニングです。
1日3時間以上を2年弱ぐらい聞き、比較的短期間で英語力を伸ばし
(短時間ではないです、その他もひっくるめてこの間の英語接触時間は2000時間ぐらい)、
英語を使って仕事をしたいという目標を達成することができました。

ですから自分のように英語を使って仕事ができるようになりたい人に、どうやって英語力を伸ばせばいいかと聞かれたときには、
自分の経験をふまえて「まずボキャビルとリスニングで多量の生の英語に接することです」とアドバイスしてきました。
こういう人たちは、ある程度の英語力はすでに持っていて、多少しんどくてもはやくうまくなりたいと思っている場合が多いので、
それはそれでさほど的外れではなかったかなと思います。

しかしここ2、3年、もっと初級のレベルから始める人、一般の英語を学習する人たちを教えたりするようになって、
自分がやった方法を勧めるとどうもうまくいかない、あるいは無理な場合が多いらしいことに気づくようになりました。
「他人のやり方を鵜呑みにせず、自分でいろいろ試して自分にあった方法を見つけてください」というのも私の基本的なスタンスなのですが、
そう言うと、初心者でどうやっていいかわからないんだから、具体的に何をやったらいいか示してほしいという人も出てきたりします。
「では、音読をして英語を英語のままで理解する回路を作りましょう」と提案したりもしました。
音読は本もいろいろ出ていて、それらには具体的なやり方も書かれているのでやり易いと思ったのです。

でも音読はどうも辛いらしい、やりきれない人が思いのほか多いのですね。
私自身は英語の音に対して親和性があるというか、英語を聞いて楽しい、
自分で声に出していても気持ちがいいというところがあるので、音読するのは結構楽しいトレーニングなのです。
(トレーニングフリークっぽいところもあるように思います。”最低3ヶ月毎日やらないと変化はない”と思ってそれを楽しみに毎日繰り返せたりする)
でも学習者の人に、「毎日1〜2時間3カ月やりましょう、200時間ぐらいでbreak throughが来ますよ」と言ったとたん、
即拒否か、やり始めても中途でギブアップ。
そうなると本人にかなりの挫折感が残ってしまい、下手に勧めなければよかったとすごく後悔したこともあります。

そんなふうにもやもやしているところに、SSSの多読を知ったのです。
100万語を達成すると、多読でも英語回路はできるらしいのはだんだんわかってきました。
でも本当にできるのか、音なしでどうやってできるんだろう、何だかんだといってもまず音が先に入るべきじゃないだろうか、
できた人がたくさんいるようですよとは言えるけど、自分の経験ではないので自信を持って言い切れない、
そこが弱いなあ、などなどいろいろ思って、私はこれからはどっちを
勧めたらいいんだろうとフラフラして決められませんでした。

でも最近ふと思ったのです。「あ、やる人自身が自分でどちらか決めたらいいじゃないか」
そうなんです、私が決めてあげることはないんです。本人が選べばいい。

1万語ぐらいの長さの英文を繰り返し100回音読するか(私が思っているのは素ではなくオーバーラップでですが)、
あるいは100万語多読するか、たぶんどちらでも英語回路はできるだろうと思います。
おもしろいのはどちらも語数的には100万語の入力、接している時間は200時間弱になるんですね。
専門家によれば復唱というのは「機械的に、自動的に聴いた言葉がそのまま構音活動へ転換されるということはなく、
いったん受け取られたセンテンスはもう一度主体的なセンテンスとして再生産される」
(山鳥重『ヒトはなぜ言葉を使えるか』(講談社現代新書)
そうですから、繰り返し言うのもちゃんと頭の回路を通ってそのたびに意味を新たに理解していることになるらしいです。
そして英語回路ができてしまえば、水車に水を注いで回すように、多量の英語を流し込んでいけばいいのです。

回路ができてからどうするか決めるのも本人でいいと思います。
たくさん読んでもいい、たくさん聞いてもいい、できれば両方やるのがもっといい。
ただ多聴の場合は、graded readersほどにスモールステップでレベルを上げていける素材がふんだんに手に入りにくいので
(graded readersのテープやCDは高価ですよね)
学習者向けに手を加えた英語教材でなく無加工の素材を使う場合は、英語の音にある程度慣れがあり、
使われている語彙もある程度身につけている人が向いていると思います。
そうなると多読のほうがカバーできる学習者層が多聴に比べ、たぶん相当広いだろうという気がします。

これまで英語がうまくなるには多量のinputが不可欠、でもそんなに英語に時間をかけられる人ばかりではない、
何とかして短い時間でも英語がうまくなるような効率的な方法ってないのかずっと探し続けてきました。
(正直なところちょっと抜け道的な方法もあるのではと期待していたところもあります)

でも今は「多量のinputしかない、時間もかかる」と明確に言い切れる感じがします。
問題なのはどう短い時間で能率をあげるかではなく、
英語をやる人が、英語を習得するプロセスをどれだけ困難なく楽しく、
挫折せずに続けていけるかではないかと思い始めています。

まだまだわからないことがいっぱいあるのですが、この掲示板はいろんな人の経験がつぶさに聞けて本当に参考になります。
これからも、皆さん、どうぞいろいろ教えてください。

▼返答


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