Holesの感想です。

[掲示板: 〈過去ログ〉親子で多読を楽しむ -- 最新メッセージID: 4028 // 時刻: 2024/5/2(20:59)]

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[喜] 486. Holesの感想です。

お名前: MOMA親爺
投稿日: 2003/5/9(17:25)

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長い感想でごめんなさい。旅先のローマのホテルで書いています。
まだお読みでない方の興をそがないように、書いたつもりですが・・・

まずかなり分厚い本で、これはPBといってもいいです。
しかし単語のレベルは普通のPBよりはかなりやさしく、かなりのスピード
で読めます。皆さんの感想や解説で「穴を掘ることが延々と続く・・・」
と書いてあり、例えばカミュの「シジホスの神話」のような観念的な小説を
想像していました。
確かに神話的要素も多く見られます。Scorpion, rattlesnake, lizard(とかげ)
といった砂漠の小動物が効果的に小説を彩ります。Onion、peachも大事な
主人公であります。呪いをかけられるというモチーフも随所に登場します。
どうして静かで緑鮮やかな湖が100年で渇いて砂漠になってしまったの
か?主人公の家系に何代にもわたってかけられた受難のいわれ、発端はなん
なのか?このあたりの物語は西部開拓史であり、東欧の民話風でもありわく
わくします。とてもおもしろい。
言葉への、あるいは綴りへの過剰なこだわりが随所に出てきますが、これは
読み書きのできない「Zero」君の存在と見事に対比しており、これに注目し
て読むのも一興でしょう。Spellという単語は「言葉」であると同時に「呪い
、呪縛」を意味しますが、これをいっちゃおしまいかな?ただ、さすがにこ
の小説ではSpellが両義性を持って使われることはありません。そのかわり
curseという別の言葉がよく使われます。さて主人公Stanleyから綴りを
教えてもらうようになるZeroですが、それに気が付いた大人達は無理矢理
それを封殺します(そのように僕は読んだ)。まるで何かに怯えるようにね。

黙示録的なんだな。Stanleyが矯正キャンプに送られるきっかけとなった
空から振ってきたシューズ。盗みの疑いをかけられキャンプで黙々と穴を
掘ることになるStanleyですが、普通ならこんな理不尽には耐えられるもの
ではありません。なぜStanleyはすんなりこの苦行に従ったのか?天啓とし
か思えません。子供ながらに感じていた一家にまつわる不条理としか思え
ない運の悪さ。自分自身へのもどかしさ。これらへの解決に繋がる何かを
あのシューズに感じ取った(心の深いところに触れた)のではないかと、
思いました。神様は父親にシューズを与えた。( Stanleyの父はしがない
発明家で、シューズの臭い消しに一生を捧げているようです)しかし、
どうも父のやっていることは違うような気がする。あんなのじゃ、おそらく
だめだ。神様は、今度は僕にヒントをくれているような気がする。といった
ところでしょうか?

「何をやってもうまくいかない」というのは君のせいではないんだよ、君の
先祖がどこかで道を踏み外したせいなんだ、いやちょっと言い過ぎ。ボタン
をかけ間違えたせいなんだ。でもそれを克服するのは君しかいない。
それで君自身大きく変わることになるし、君の家族も救われる。
Zeroと一緒に頑張れ!君達が正しいボタンの「穴」を見つけられれば、
世界もちょっとは変わるかも知れない。
最後はちょっと「言葉」がスペリ過ぎましたかな?いや、おそまつ。

最後の1〜2章は不要です★2つ減点。いかにもアメリカ的で「しょうが
ないなあ!」って感じ。でも200ページくらいまでは
★7つくらいあげてもいいくらい面白かった。で結局★★★★★。


▼返答


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