多読&シャドーイングの道筋

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[報告] 241. 多読&シャドーイングの道筋

お名前: トオル
投稿日: 2006/9/20(01:04)

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こんにちは、トオルです。

今さらという感じはしますが、
昨年末にまとめた多読&シャドーイングの実践報告を投稿します。
海外で研究生活を始めた時点で考えていたことです。
既にこの報告を書いてから9ヶ月経っているのですが、
この続きは2007年3月に迎える5周年のときにでも
書きたいと思います。

Title:
A practice report of extensive reading and shadowing to be an English user

初稿 12/20/2005

1)はじめに
・英語嫌いだったビジネスパーソンがMITに派遣
民間企業に勤める30代の技術者で、2005年10月からアメリカ、
ボストンにあるマサチューセッツ工科大学(MIT)に客員研究員として
来ています。仕事はMITとの共同研究を進めることで、教授と学生2人と
一緒に研究しています。
英語が好きで海外で仕事したくて入った会社ではなく、どちらかというと
英語で仕事するのは嫌だと思って入った会社です。入社したときは典型的な
日本の会社でしたが、グローバル化の波に呑まれて外資企業になりました。
受験英語はできたのですが、英語が話せたり、聞けたりは全くできず、会社
で海外の研究者が来ても逃げていました。英語ができたらと思った時期は
ありましたが、英語の問題集をやるのが苦痛で、気がついたら、英語が嫌い
でした。

・英語=TOEICがほとんどだったころは嫌で逃げていた
英語が嫌いになった一番の理由はTOEICの試験問題集です。会社は社員
に受験することを勧めていて、私も受験しなくてはいけないと思って
TOEICを受けてました。試験でできるだけいい点数を取りたいと思う
ので、TOEICの試験問題集を買って、勉強するのですが、これがすごく
苦痛でした。いつも数ページやっては挫折して本棚に置きっぱなしでした。
英語=TOEICだったから英語が嫌いになったと思います。
またTOEICの勉強をしても映画が字幕なしで楽しめるわけでもないし、
話せるわけでもない。さらに自分がやりたい研究とTOEIC=英語は全く
私の頭の中では無関係でした。
英語が嫌いで逃げてきたけど、仕事で英語を使わないといけなくなってきた
から。もっと極端な言い方をすると、英語ができないと自分がやりたい仕事
ができなくなってきたから英語ができるようになりたいと思った。
だけど、TOEICはどうしても好きになれない。そこで、いろいろ調べて
たどり着いたのが多読でした。

・自分の世界が広がっていくのを日々実感
MITに来て2ヶ月経ちますが、こちらに来てよかったと思います。
MITの教授たちと自分がやりたい研究について議論していくうちに、
今までできないと思ってきたことがやれるかもしれないと思えてきた。
日本にいて仕事をするよりこちらで仕事したほうが自分のやりたいことが
実現できると思っています。
社会に出て10年以上たって、自分の可能性が急激に広がっていくのを
感じることができてとても嬉しいし、ワクワクしています。

2)多読歴
・まだ始めて3年半
2002年の3月に多読を始めたときは、英語を話せない、書けない、
聞けない、読めないの四重苦でした。それでも年に1,2回は来社した
外国人に英語でプレゼンをして、質疑応答をしていました。英語での技術
論議は何を言っているのかさっぱりわからない状態でした。
多読を始めてから3年半たちました。500万語を過ぎてからカウントを
真面目にしていませんが、本で約600万語、英字新聞は1年半読んで
います(100万語相当、2000語/日計算)。シャドーイング歴も3年。
シャドーイングとほぼ同時に始めた多聴も3年になります。
3年半は長いと思いますか?私はたった3年半でMITと共同研究できる
なんて、思ってもみませんでした。

・100万語、300万語の語数のあとは語数による変化は少なかった
 SSS式の多読では読んだ語数を数えて、100万語を目標としています。
100万語を読むことによって英語を読む抵抗感はかなり少なくなり、
自分にあった本を選択することができるようになりました。自分に合わない
本を読むと、全く英語の本が読めなくなったり、疲れが溜まったりします。
300万語を過ぎたあたりからどんな本でもそれなりに読めるようになり
ます。本もGRはだめとか、児童書はだめ、絵本はだめとかいうアレルギー
もなく、GR、児童書、絵本、PB、雑誌、新聞、WEB、ビジネス書、
専門書なんでも読みます。
私はカウントした本で600万語、英字新聞、英語の雑誌、WEBを入れると
700万語は超えるはずですが、300万語以降、目立った変化はありません。
「普通」に本を読むだけです。

・多読してよかったこと「継続して英語ができるようになった。英語が好きになった」
SSS式の多読をしてよかったことは、大きくまとめると3点です。
英語を身につけるという意味では継続して英語に触れられるのが一番大きかったです。
1)継続して英語に触れられるようになった
継続して英語に触れ続ければ、3年半で英語でなんとか技術論議ができる
レベルにはなります。特に旅行や短期の出張で英語に困ることはなくなります。
2)たくさんの物語を読むことができた
多読していなければ、社会人になってたくさんの児童書を読むことは
なかったと思います。
児童書を通じていろんなことを感じたり、考えたりすることができました。
3)たくさんの仲間ができた
多読を通じて、数多くのタドキストと知り合い、仲間になることができました。

3)シャドーイングと多聴
・シャドーイングの始めは何回も挫折
100万語達成してからシャドーイングを始めたのですが、挫折の連続でした。
なにしろ、シャドーイングをやると意気込んで始めて、5分もしないうちに
眠くなって続けられないのです。シャドーイングの素材もいろいろ試しました。
しかし、どれも自分にあわなくて、ダメでした。挫折の連続は2002年
6月から9月末まで3ヶ月続きました。きっかけは、"Frog and Toad All Year"
でした。朗読の背景に流れるバイオリンのリズムがとても気に入って
今まで5分も持たないで眠くなったのが、起きていられます。
そして、必ずシャドーイングできる"said Frog"と"said Toad"がとても
嬉しかったことを覚えています。そして、2週間ぐらいほぼ毎日
"Frog and Toad All Year"を聞いて、その後、酒井先生にシャドーイングを
聞いてもらいました。
酒井先生の前でシャドーイングしたときはとても緊張して、
最初、シャドーイングできなくて、酒井先生に聞いてもらわないように
してからようやくシャドーイングができました。
それ以降、シャドーイングが楽しくなったり、あきたりして気がつけば
3年経ってました。

・Audio BookやDVDでたくさん英語を聞きながら、シャドーイング
シャドーイングの目的は英語のリズムの獲得です。SSS英語研究会の
シャドーイングは聞こえてくる英語の意味を考えないで、聞こえたままの
音をそのまま声に出すものです。カラオケで新曲を歌詞なしでうまくリズム
をとって歌うのに似ています。このシャドーイングで発声できるように
なった英語の音は耳でもはっきり聞こえるようになります。発音の練習は
全くしなくても英語の音が発声できており、周りの人はその人が英語を
話しているように聞こえるのです。シャドーイングができるようになって
からは映画を観ていても理解できるセリフがどんどん増えています。  
シャドーイングができるようになってからはAudio Bookをよく聴いたり、
DVDの映画をよく観るようになりました。気に入ったところはシャドーイング
してナレータのセリフを真似したり、DVDでは主人公になりきってセリフを
言ったりすることがあります。あと机に座ってシャドーイングしていること
はなくて、歩きながら、片付けながら、ネットみながらの「ながらシャドー
イング」することが多いです。

・発音を気にしないで英語が話せるようになった
 シャドーイングで英語リズムがだいたいわかるようになってくると
(多読でははっきりわかるのはいつも後で、なんとなく、だいたいわかるが
多い)、英語の音も聞こえるようになってきて、たくさん英語を聞いても疲
れなくなってくる。
そして、ときどき頭にイメージというか、意味が突然、響いてくるようにな
ります。このときシャドーイングやリスニングの調子がすごくいい状態にな
っており、私はこの状態をシャドーイング・ハイと呼んでます。またこの状
態になると英語を聞いているだけで幸せだと思えるようになります。
シャドーイングでよかったのは発音を気にしないで英語を話せるようになっ
たことです。相手に何回も聞き返されると、カタカナ英語がますますひどく
なって、英語が通じなりますから。

4)実際(ビジネス)での英語活用
・海外出張と学会発表
 多読を始める前に仕事で英語を利用する機会は何回もありました。
そのうちの一つが、海外に学会発表することです。これは研究内容を
発表論文にまとめ、事前に原稿を学会に提出し、海外に行って研究内容を
発表する(プレゼンテーションする)ことです。研究内容を論文にまとめる
のは日本語で行ってから英語に翻訳するのですが、英語の翻訳を外部に依頼
していました。発表原稿に関しても日本語で作成してから、英語の翻訳を
外部に依頼してました。問題なのは発表時の質疑応答ですが、これも事前に
日本語で想定問答を考えて、事前に英語に翻訳してもらってました。ここま
でしてあると、発表のときに多少、想定と違う質問が来ても想定していた
ことを答えることでなんとかなることが多かったです。

・海外企業と一緒に仕事をする
海外発表するときは海外の企業を訪問することが多いです。海外の事業所に
駐在している人に依頼して訪問先を紹介してもらったり、自分で
インターネットで調べたり、研究に関する展示会に行ったりします。
自分から話す内容は主に学会発表のネタで、既に英語にしてあるものです。
学会発表と異なる点は質疑応答に制限時間もないので、自分が想定しない
ことを相手が言ってきますし、訪問先が新しい製品を紹介してくれて、
意見を求められることがあります。事前に英語になっていないので
しどろもどろになりながら英語で答えることが多かったです。
多読を始める前は海外企業と一緒に仕事する自信はなく、
情報交換がやっとでした。
多読を始めた後に行った海外発表のときに訪問した会社がとても
新しいことをやっているように感じられてなんとか一緒に仕事できないか
と相手に頼みました。最後は日本語でお願いしました。多読をして英語が
身についたような気がして海外企業と一緒に仕事できると思えてきたから
です。結果から言うと、社長が日本好きなこともあり、その会社と非常に
うまく仕事をすることができました。今までとは違う新しい研究に
取り組むことができたのです。

・MITとの共同研究を始めるまで
 一緒に仕事した海外企業がMITからスピンオフしたベンチャーだった
こともあり、MITと一緒に仕事をすることに親近感はありました。
また上司がMITの教授と以前から親交があり、年に1,2回MITの教授
が会社に来て研究発表会をしていたので、MITと一緒に仕事するのは
違和感がなかった。
そこで、以前から親交のあったMITの教授に自分のやりたい研究に関心を
持っていそうな、また研究を一緒にやるとよさそうな先生を紹介してもらう
ことになった。そんな先生を数名招待して、ディナーミーティングを行い、
私も同席した。
自分がやりたいことは事前に配布していたが、それだけに限らず、ディナー
はいろんな話が行われ、議論が活発になった。ディナーミーティングは大成
功だったが、議論の流れがわからず、私はほとんど発言できなかったのだ。
それがすごく悔しくて、ディナーミーティングの後、1週間ボストンに残
り、ディナーミーティングに参加してくれた先生と1対1のミーティングを行った。
MITの教授は本当に忙しい先生が多く、30分時間をとるのも難しい。
日本では、会社の話とか世間話をしてから興味を持っている分野や関心事項
を話して、その後、一緒に研究ができそうかどうかを様子みながら1,2時
間の打ち合わせを2,3回しながら決めていくことが多かった。しかし、
MITでは最初からこんなことをいつまでにしたいと思っている。そのため
の研究課題はこれです。一緒に研究できますか?といったストレートな話
で、「30分一本勝負」をいくつか行った。この勝負は精神的にとてもタフ
な仕事で1日1回しただけでもくたくたになった。打ち合わせの後は自分独
りでレビューして夜寝ていてうなされることもしばしば。時差ボケも
手伝って、その週の平均睡眠時間は4時間だった。
MITの先生に自分のやりたいことを説明するだけでなく、MITの先生の
するどい質問や提案に対して、その場で切り返していかないとMITの教授
は「本気」になってこない。なにしろMITの先生に相談しにくる会社は
次から次へとあって、その全てをやるわけにはいかないからだ。MIT教授
の「本気」を引き出すために、自分がやりたいことがとても新しいことで、
すごく役に立つということを説明した。先生のコメントに対して、実際の
商品はこうなっているからこうでなくてはダメだという切り返しができた
とき、その先生はとても嬉しそうだった。君のやりたいことをこの先生にも
聞いてみなといって他の教授を紹介してくれた。その教授ともすぐにアポを
とって「30分一本勝負」をした。
結果的には、私の切り返しに対してとても嬉しそうな顔をした先生と一緒に
共同研究することになりました。その先生は、以前から親交のあった教授
に、”He seems geek”と言われ、一緒に仕事したいとメールしてくれました。
”geek”は一般的にオタクという意味ですが、オタク集団のMITでは
「面白い奴」ぐらいの意味で使われるようです。

5)現在感じていることと今後
・多読&シャドーイングで今の英語力が身についた
多読とシャドーイングによって、3年半、英語に継続して触れ続けられた
ことで今ある英語力が身についたと思います。特に英語で何か新しいこと
をしてみようという気持ちが持てたことが大きく、MITと一緒に共同研究
するきっかけになった。大学受験の頻出文例と頻出単語を覚えて、
出題パターンを解いて正解率を上げる受験英語では新しいことや
変化への対応が遅れ、実用的英語は身につかないと思っています。
多読の初期レベルではGR、児童書を中心に読むのでビジネス誌でよく出て
くる表現と異なるが、徐々に英字新聞、英語雑誌、ビジネス書を取り入れて
いけば語彙や表現に関して特に高い障壁はなかった。


・現状ではまだまだ英語で「何か」できるレベルではない。
この1年は英語を利用して英語で仕事をしてきたのですが、自分が考えて
いることを英語で説明しているに過ぎず、MITの教授が潜在的に持って
いるアイディアを上手く引き出すような議論には至っていない。英語に
関する課題でいえば、自分の知識、経験と英語による表現、構成がうまく
かみ合わず、説明が冗長になるので説得力に欠けていると思われる。
ロジカルシンキングに慣れていくことで補えると考えています。
またきれいな発音で朗読した英語がいくら聞けるようになっても、
いつも東海岸の英語をきれいに話すアメリカ人と話をするとは限りません。
ITなどの情報通信分野でアメリカの会社の人間と議論するときは
インド人、中国人が多いので相手の発音に慣れることが必要です。

・素晴らしい仲間、先生たちともっと議論して、いいものをつくりたい
自分でいくら考えてもアイディアや研究が前に進まなくなりますし、
独りで全てやるには時間が足りません。だからチームで仕事していくのだ
と思います。多読で言えば、洋書の書評を全て1人で行えばいくら時間が
あっても足らないので、たくさんの人と一緒に協力してこの4年、
1万冊以上の書評を作ってきたのだと思います。
チームで仕事するために、言語によるコミュニケーションが
とても重要です。コンピュータのプログラム言語であればそのプログラム
自体が動作するのでわかりやすいのですが、英語や日本語の言葉自体が
動作してくれないので、人がその言葉に感じるかどうかによります。
今までにない全く新しい概念や技術を創っていくときはいかにチームで
「キーワード」を共有できるか、また「キーワード」をさらに進化した
考えに持っていけるかがポイントになります。
そのために、自分のやりたいことをわかりやすく説明してチーム内での
議論が重要だと考えています。この議論は徹底的にアイディアが出尽くす
までブレーンストーミングをやるといいものが出来てきます。やることが
明確に決まればプロジェクトで分担して詳細仕様作成、プロトタイプ試作、
評価をそれぞれ得意な人と一緒に進めていきます。

6)現場の先生への希望
・受験英語で子供達をしばらないでほしい
英語に関して何も知らない子供がほとんどだと思います。私も英語とは
全く関係のない子供時代を過ごしました。中学、高校は田舎で教育を受けた
ので、英語=異文化に触れる道具なんていう意識は全く持てなくて、
英語=受験英語でしかありませんでした。コミュニケーションの楽しさとは
全く無縁で、英語を勉強すると何ができるのかとか全くわからない。
5文型などの文法を習って、後はひたすら英文を日本語訳させるだけ。
日本語訳できない=英語ができないでした。
多読を始めて、いろんな本を読んで、初めて英語が楽しいと思えるように
なりました。子供には英語が楽しいと思えるような教育を受けてほしいと
思います

・子供の可能性を伸ばす
大学、会社、そしてMITに来て、いろんな人達と話してわかったのは、
いろんな世界があるということを子供にみせること。また体験させること。
子供のころに親の海外赴任で日本とは違う世界があるとわかった子供は
他の子供と比べて選択肢が全く違います。
子供にとって英語が楽しいと思えるのは親や周りの人が英語を使って、
楽しそうにしているのを見るからだと思います。一人一人の子供が
将来やりたいことがあって、そのやりたいことをするのにいろんな国の
人達と一緒に仕事することが必要なので、自然と英語を使っていた状態に
なればいいですよね。

・自分で考えるように
たくさんの選択肢から選ぶのは自分です。自分の人生なのだから。
親でもなく、先生でもなく、友達でもない。だからいつも自分で考えるよう
にしてください。親、友達、先生の意見はどんどん聞くべきだと思います
が、決めるのは自分です。「個性的=人とは異なる」ではなく、
「個性的=自分で考えて行動する」ということを教育することが重要だと思います。
いつも正しい(=楽な)決定ができるわけではないけど、自分の決めたこと
だからやっていける。逃げたくなったら逃げるのも自分の決定。自分の決定
で周りの人や社会の見る目が変わるのはしかたがない、評価がいつもいいわ
けではないです。
 自分で考えたことを自分でやることは、他人が考えたことをやるより
はるかに楽しいことが多いです。自分が考えたことが実現して世の中の
役に立てば最高の幸せだと思います。

Happy Reading!!


▼返答


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